妻が反論するチャンスを夫の暴力でつぶした
さらに、“妻を思う夫の愛“といった美談に待ったをかけたのが、テレビ司会者で政治評論家のミカ・ブルゼジンスキーでした。
これまでにも赤裸々にプライベートを語り、世の女性達を勇気づけてきたジェイダを<自分で自分の面倒を見られる人だ>と称し、ウィル・スミスの行為を正当化する論調にクギを差しています。 ジェイダ自身の言葉でロックに対して正攻法で反論できたのに、夫の暴力がそのチャンスすら奪ってしまったというわけですね。そして、ウィル・スミス当人についても、こう苦言を呈しました。
<彼には、ステージに向かうまでの間に、自分のしていることについて考える時間がたくさんあった。それなのに一体なぜこんなことになってしまったのか。本当に残念で仕方ないし、見るにたえない絵面でした。> (『THE WRAP』2022年3月28日配信 筆者訳)
本と欧米とでは感覚に大きな開きがある
いずれにせよ、欧米のメディアは総じてウィル・スミスに対して批判的です。もちろん、誰もクリス・ロックの言動を褒め称えませんが、そうした下品な言動以上に、理性を失い華やかなイベントをぶち壊したことを、公人としてあるまじき行為だと考えているのでしょう。
このあたりの感覚は、日本と欧米とではかなり開きがあるように感じました。
マナーやプロトコルをどれだけ重んじるかという文化的な違いによって、同じ出来事でも正反対の見え方が生まれる…映像のインパクト以上に、学ぶべき点の多い事件でした。
Sources:『The Guardian』『The Telegraph』『THE WRAP』
<文/沢渡風太> 沢渡風太
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