照井雪乃(南沙良)と真中信太郎(高橋文哉)ら成績上位者は「1000万円の請求なんてふざけています」「そもそもこんな依頼、断ります」と検討すらせず、早くこの授業を終わらせようと桐矢純平(前田旺志郎)らほかの学生にも同意するよう無言で圧をかけるが、同調圧力をものともせずXの依頼を引き受けると答えたのが水沢だった。「タトゥーがあるからって反社会的な人間とは限りません」と怒気をまとう姿は意味深だった。
視聴者のなかには、本作品で俳優・前田拳太郎を知った人もいるのではないか。LDH JAPAN所属の23歳は、ドラマ初出演が2021年4月。なんと役者デビューから2年経たずして月9ドラマの主要キャラに上り詰めた。2021年9月から2022年8月まで『仮面ライダーリバイス』(テレビ朝日系)で主演を務め、特撮界隈では名の知れた存在になったが、本作品ではヒーローから一転、警備員や工事現場作業員などのアルバイトで生計を立てながらロースクールに通うという苦学生を熱演している。その役柄のギャップに、SNS上では前田拳太郎とは気づかずに見ていた『リバイス』ファンもいたようだ。
前田拳太郎演じる水沢は、授業に度々遅刻し、成績もよくないため留年の可能性まで浮上。さらにタトゥー入りの友人に校内で金を渡している様子が目撃され、真中に掴みかかる喧嘩騒ぎを起こすなど、傍から見れば問題児と言われても仕方のない要素に満ちている。ただ、それは“傍から見れば”という見かけの話だ。母子家庭で育ち、奨学金の返済に追われている水沢の実情は、学費と生活費をねん出するためにアルバイトを掛け持ちするあまりに時に遅刻をしてしまい、友人に金を渡していたのも、授業料の支払いのために生活費が足りなかった水沢が一時的に金を借り、それを返していただけだった。そして水沢が弁護士を目指す理由は、そうした友人たちがみな給料も安く、大した保障もないまま働いている状況にあり、彼らを助けたいがためだった。真中との喧嘩騒ぎも、大事な友人を見かけだけで判断され、「あんなのとは縁を切ったほうがいい」などと言われたがために思わずカッとなってしまったからだ。遅刻や喧嘩は褒められた行為ではないが、仲間想いで努力家な水沢の実像を知ったことで、ほかの生徒たちにも授業への姿勢に変化が生まれていく。