だが、そのあらすじや設定から、放送前から“作品の類似”が指摘されるという“逆風”が吹いた。『リバーサルオーケストラ』は、『最愛』『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)などを奥寺佐渡子と共同で手がけてきた清水友佳子単独脚本のオリジナル作品だが、人気マンガの実写化作品となったフジテレビ系月9ドラマ『のだめカンタービレ』(2006年)や、韓国ドラマ『ベートーベン・ウィルス』(2008年)などの名を挙げて、“パクリではないか”などと騒がれたのだ。

 完璧主義のエリート指揮者と天才演奏家の組み合わせという点では『のだめカンタービレ』、市職員が傲岸不遜な指揮者とオーケストラ立て直しを図るという点では『ベートーベン・ウィルス』と似ていると言えなくもない。が、この手の“オーケストラ再建モノ”は多く存在し、人によっては、松坂桃李演じるヴァイオリニストと西田敏行演じる指揮者がメインの映画『マエストロ!』(2015年)などを思い出す向きもいる。また、オーケストラに限らなければこうした“一発逆転の音楽エンターテインメント”はさらに数が多く、ある種の定番といえる。『リバーサルオーケストラ』は、『のだめ』とも『ベートーベン・ウィルス』とも『マエストロ!』とも設定や展開が異なり、あらすじだけを見てパクリと言うのはお門違いだろう。

 だが、初回放送を見るかぎり、そのストーリー展開は既視感が強い。主人公・谷岡初音(門脇麦)はかつては神童の名を欲しいままにしていた天才ヴァイオリニストであるものの、10年前の出来事をきっかけに表舞台を去り、地元の広報広聴課の職員として働きながら、ヴァイオリン教室でこっそり指導している。妹の奏奈(恒松祐里)は姉がヴァイオリンを辞めた原因が自分の持病にあったことに責任を感じており、また演奏してほしいとの思いを抱いていたことを知って、初音はふたたびヴァイオリン演奏に向き合うことに。その初音をポンコツオーケストラのコンマスに抜擢する常葉朝陽(田中圭)はドイツで指揮者として活動していたが、市長である父親・常葉修介(生瀬勝久)に母親が倒れたと騙される形で帰国、地元オーケストラの再建をなかば強引に引き受けさせられる。地元オーケストラの楽団員は遅刻したり、パート譜を忘れたりとやる気がなくのほほんとしており、実力も「最低」だが、しかし弾く音は「悪くない」というところから再建は始まり……。