7:『バビロン』2月10日公開

 『セッション』や『ラ・ラ・ランド』で絶大な支持を得るデイミアン・チャゼル監督が、1920年代のハリウッドの「狂乱」を描く。何より特徴的なのは、R15+指定がされることも当然な過激な表現の数々。ブラッド・ピットやマーゴット・ロビーを筆頭とした豪華役者陣による、「こんなことまでやるの?」と思うほどの人物描写も見所だ。

 もちろん、映画業界を描いた映画だからこそ、映画館のスクリーンで観ればより劇中の出来事との「シンクロ」を感じられるはず。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』にも近い、ハイテンション&ブラックユーモアで189分という長い長い上映時間中、ずっと疾走するような映画体験にこそ意義がある。そのあまりに極端な描写の数々、はたまた「しっちゃかめっちゃか」な作風のためか、本国では賛否両論の評価となっているが、個人的にはチャゼル監督のぶっちぎり最高傑作だ。

 アカデミー賞6部門にノミネートされ、作品賞を初めとした各賞受賞の最有力候補。他にもあらゆる権威ある賞を総なめし、つい先日のゴールデングローブ賞ではミシェル・ヨーが主演女優賞を、キー・ホイ・クァンが助演男優賞を受賞。さらには、エッジの効いた映画を続々と世に送り出すスタジオ「A24」史上最高の興行収入を記録。そんな風に2023年の随一の話題作であるのだが……中身といえば良い意味でまったくまともじゃない!

 何しろ、あらすじは確定申告をしに来た平凡な主婦が「マルチバース」から来た夫に世界を救うように命じられるというもの。とある理由により「ヘンなことをしながら戦う」様は日本の漫画『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』を連想させた(他にも両者には共通点があるがネタバレになるので秘密)。監督のダニエルズ(兄弟)の前作『スイス・アーミー・マン』もダニエル・ラドクリフの死体を十特ナイフのように使って大冒険する内容だったので、そもそも普通の映画になるはずがなかったのだ。

 とはいえ、そんな映画史上においてトップクラスにヘンテコな『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は、凝りに凝った映像表現や、あっと驚くカンフーアクションなど、映画館でこそ堪能してほしい「見せ場」が詰まりに詰まった、そして思いがけない感動が待ち受ける傑作だ。ぜひ「なんじゃこりゃ!」という衝撃も含めて楽しんでほしい。