現実逃避の行き着く先とは……

 夢を抱いて上京したものの、大学卒業後は鳴かず飛ばず。気づけば歳もそれほど若くない。バイトで食いつなぐ日々がいつしか日常になってしまい、振り返っても何も成し遂げていない……。

 社会のせいだ、環境のせいだ、親のせいだと八つ当たりしたところで現実が変わるわけでもない。そんな自分を受け入れるしかない。しかし、受け入れたくない。そんな狭間で葛藤し続ける人間のほうが、現代社会においては圧倒的多数派ではないだろうか。

 決して現実逃避自体が悪いことだとは思わない。ストレス社会、理不尽な社会システムから、一時退却することだって大事なはずだ。映画やテレビだって現実から少しでも離れられるものとして機能しているわけなのだから、もともと人間が少しの間、現実から目を逸らすことは、大切な行為であるはずだ。

 ところが、逃げてしまうと失うものが多くあるのが現実社会。愛や友情、信用など、人間関係という束縛が逃げ出すことさえ許さない環境を作り出しているが、そんなものさえも断ち切って、現実逃避をし続けたら、人間はどうなってしまうのだろうか……。いつかは行き止まりにたどり着くのか、それとも新たな道が切り開けるのか? 行ってみないとわからないけど、行ってみたくはない。