共演には、『もっと超越した所へ。』(22)に続き、またしてもヒモ男に振り回される役を演じた前田敦子や、毎熊克哉、野村周平。それぞれが普通にいそうなキャラクターを演じることで、ファンタジー的ではなく、現実社会の延長線上の物語であるという説得力を加えている。
また、豊川悦司が、現実から逃げた象徴でもある、妙な父親役を演じているのも注目すべき点だ。言ってることは理不尽で不良的ではあるが、トヨエツは『子供はわかってあげない』(21)で演じた元カルト教祖という変な役を演じても、不思議な説得力がある。
【ストーリー】
自堕落な日々を過ごすフリーターの菅原裕一(藤ヶ谷太輔)は、長年同棲している恋人・里美(前田敦子)と、些細なことで言い合いになり、話し合うことから逃げ、家を飛び出してしまう。その夜から、親友・伸二(中尾明慶)、バイト先の先輩・田村(毎熊克哉)や大学の後輩・加藤(野村周平)、姉・香(香里奈)のもとを渡り歩くが、ばつが悪くなるとその場から逃げ出し、ついには、母・智子(原田美枝子)が1人で暮らす苫小牧の実家へ戻る。だが、母ともなぜか気まずくなり、雪降る街へ。行き場を無くし、途方に暮れる裕一は最果ての地で、思いがけず、かつて家族から逃げていった父・浩二(豊川悦司)と10年ぶりに再会する。「俺の家に来るか?」、父の誘いを受けた裕一は、ついにスマホの電源を切ってすべての人間関係を断つのだが……。