月例経済報告は物価表現を上向き変更
内閣府が月例経済報告で消費者物価に対する表現を上向き変更した背景には、生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価指数の上昇がある。総務省によると、2015年を100とした2018年2月の生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価指数は100.8。前月比で0.1%の上昇を示している。
前年同月比で見ても、消費者物価指数は2017年3月が0.1%のマイナスで、4~6月の間、横ばいを続けていたが、7月にプラスへ転じたあと、少しずつプラス幅を広げている。2018年2月は0.5%まで拡大した。
個別の品目を見ても、ビール代6.1%、医療機関の診療代3.5%、宿泊料5.2%、都市ガス代4.5%、ガソリン代10.9%などと値上げがずらり。公共サービスから光熱費、食費、レジャー費まで幅広く値上がりしていることがうかがえる。
茂木敏充経済再生相は記者会見で「基本的にはデフレ脱却に向けた動きが進んでいると考えている」との見方を示したが、内閣府は人手不足を背景とした賃金や原材料価格の上昇などが物価に影響を与えているとみている。
消費拡大見えず、悪いインフレに突入か
インフレには良いものと悪いものがある。良いインフレとは経済が活気づき、需要が供給を上回る形で発生する。価格上昇で企業のもうけが増え、社員の賃金も上がる。家計が潤うことでさらに消費が増える好循環が続く。政府や日本銀行が2%の物価目標にこだわるのはこのためだ。
これに対し、悪いインフレは需要の拡大を伴わないため、価格が上がっても企業のもうけは増えない。家計が潤わないから、物価上昇が打撃となり、消費が鈍る。場合によっては景気が後退して物価だけが上昇するスタグフレーションに陥ることも考えられる。物価上昇が経済の悪循環を招くことになる。
世帯の可処分所得はここ20年ほど伸びていない。名目賃金が大きく伸びない中、物価の上昇で実質賃金が低下している状態だ。日本銀行が2~3月に実施した生活実態アンケートでは、1年前に比べて収入が増えた世帯が12.1%だったのに対し、減った世帯が32.8%に上った。逆に支出は40.6%が増加し、減少した15.4%を大きく上回っている。
働き手の賃金が物価上昇に追いつかず、消費の拡大が見られない以上、悪いインフレに向かう前兆が見えるといえそうだ。この苦境をどう打開するのか、政府や日銀は苦しいかじ取りを強いられている。
文・高田泰(政治ジャーナリスト)/ZUU online
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