さらにいえば、出版社側の事情もある。ある出版社社員の話。

「本は、今や2~3万部も売れればいいほうです。概ね、初版は4000部~5000部ほど。1冊の本を長く売る時代ではなくなっていて、まるで雑誌、ムックのように本を出す感じです。もちろん小説なんかは、長く読まれるようなものを目指して企画するものもあります。ただやはり、そういったものはすでに売れている人、大御所など知名度がある人にオファーをすることが多いです。

 結局、人々の興味の対象がすぐに移り変わる今の時代、本も入れ替わりが激しいので、社内でも常に新刊の企画を立てている状態です。というのも、よほどの名作や、ドラマ化などの話題作は別として、“新刊”でないと、本屋さんの目立つところに置いてもらえない。だから、筆が速い著者は重宝します。

 その点、芸人さんは生い立ちや生き方がユニークだったり、ポリシーのある方が多いので、企画しやすい。芸人さん側としても、さまざまな発信ツールがあるなかで、本というのはやはり別格。自己紹介代わりにもなるので、自分に興味をもっていない人に、興味をもってもらうツールとしても役立つんですよね」