まずは『映画 ゆるキャン△』。2018年、2021年の2度にわたりテレビアニメ化され、2020年と2021年にはテレビドラマも放送、発行部数は700万部を突破している人気マンガの映画版だ。
山梨県に住む女子高生たちが野外キャンプを楽しむ様子を描いた作品で、実際にキャンプの計画を立て、現地までの途上で見た光景などが詳細に描写され、調達した食材を使った料理に舌鼓を打つグルメマンガとしての側面もあり、アウトドア趣味を持つ作者の実体験に裏付けされた、キャンプのノウハウが取り込まれた作品だ。基本インドア派のオタクにすら「アウトドアって最高!」と思わせ、うっかりキャンプ道具を揃えてしまいがち。実際にキャンプに行くわけではないにせよ……。
そんな作品の劇場アニメ版は衝撃的だった。なにしろ主要登場人物の約8年後の姿を見せたのだから。みんなは高校を卒業し、県外や地元で就職している。地元山梨の観光推進課にUターン転職した仲間が数年前に閉鎖された施設の再開発計画を手掛けたことから、「理想のキャンプ場」を作るため、久しぶりにキャンプ仲間たちが再会する。
「女子高生だった主人公らが大人になり、社会に出て行っている」という設定は、オタクのみなさんには受け入れがたい「変更」だ。オタクのバイブル『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』が「永遠に終わらない学園祭前夜」を描いたようにオタクは終わらない祭りが大好きだ。「『ゆるキャン△』の登場人物が大人になるなんて、そんなの見たくない!」という一部の反発が予想された。