お給料のどれくらいを投資に回せばいいの?
――投資する場合、収入に対して何割ぐらいがベターというような数字はありますか?
「『5・3・2の法則』を知っていますか? これはアメリカで多くのフィナンシャルアドバイザーがすすめているものです。月々の収入のうち5割を生活費に回して、残りの3割を自由に使える娯楽費、2割を投資に回すという考えです」
「一方で、僕がすすめるのは『3・5・2の法則』です。投資を優先してまず3割、その後、家賃を払い、残ったら遊んでいいよという法則です。詳細は本に書きましたが、これができれば理想的ですね。若いうちは『4・5・1』でもいいと思う。遊ぶお金も生活費も工夫次第で減らせるはずです」
「僕は、26歳から28歳までの頃『7・2・1』ぐらいで暮らしていたんですよ。お金に苦労した経験があるので、節約ぐせが身に付いていたしね。アルバイトでモデルの仕事を始めたら収入が一気に増えたんです。そのとき住んでいたのが家賃8万円の家。当時の僕としてはちょっと高めだったけど、都心の便利な場所だったので、タクシーを一切使わず、東京のいろんな場所にいつも自転車で移動することができました。当時、40万~50万円くらい稼いでいたけど、生活費を13万~14万円ぐらいで収めて、その2~3倍を投資していました」
「とはいえ、割合については自分の許容範囲内に収めることが大切です。無理に節約して倒れたり、人生が嫌になったりするようなら割合を変えてもいいと思うんです。ただ、 “節約が趣味”と捉えて1~2年、一所懸命お金を貯めて投資してみてください、50年ほったらかしにすれば、めっちゃいい老後が待っていますよ!」
投資はギャンブルじゃない! 気を付けたい5つのポイント
――投資で注意したいポイントなどはありますか?
「まず自信過剰に気を付けましょう。僕も若い頃は自信過剰で、この銘柄は絶対上がるからと投資して、『下がってきた! ヤバい!』って急いで株を売却したら、その後、また上がって、『最悪だ!』という経験をしました」
「もう1つが一喜一憂しないこと。僕がモットーとしているのは『Don’t feel, think!(感じるな、考えろ)』です。株価が下がったときにパニックになって株を売るのも、上がったときに興奮して買うのもどちらも気を付けてください。感情で動いてはいけません」
「3つ目は短期投資をしないこと。僕の投資のセオリーは価値に投資して、その価値が増すのを待つことです。FXやデイトレードといった短期投資は価値ではなくて、表面価格の変動に投資しています。これは本当にサイコロを振るようなもの。例えば、アメリカの株式全体はこれまで浮き沈みがあっても成長を続けてきたように、長期的に見れば今後も株価の上昇が見込まれます。でも、短期投資で、1日で株が上がる確率はおよそ50%。短期的な価格変動は商品の価値によるものではなくて、マーケットの気分のような外的要因によるものなんです。長期投資の原理は違います。今日、株を買った企業は将来、新商品を出したり、新事業を始めたりと成長していくかもしれない。そういった企業価値が上がる可能性を信じて、投資したいですね」
「あと、理解できないものにはあまり投資しないこと。僕は複雑なデリバティブもビットコインもピンとこないから投資しません。自分がその価値を理解できるなら、他の投資家や消費者も理解できます。そういったものに投資するのが安全な投資です」
「5つ目は経済的な土台をしっかり作ることですね。堅い収入や資産をまず築きましょう。そのあと、リスキーなものに資産額のうち1%か5%をかけていいでしょう。冒険が失敗したからといって自分の土台が崩れるようなことは絶対あってはいけないんです」
お金を育てることは自分を育てること
――若いうちは節約して、どんどん投資をしようというお話でしたが、年齢を重ねて投資への向き合い方は変わりますか?
「多くの場合、年齢とともに収入も上がりますから、出費を抑えているままなら、増えた分のお金を投資に回せます。“お金の元”もまとまったものができてくると、海外旅行などの贅沢をするゆとりも生まれます。若い時と比べて、お金を気持ちよく使えるようになります。これも投資のおかげです。お金を育てることが自分を育てることにもつながるんです」
「高齢になってから投資をしてもいいと思うんですよ。僕は死ぬまでにパッと自分のお金を使い切りたいとは思いません。ひ孫まで残る資金を作るのが夢だから。若い頃は自信過剰でバカな投資もしたけど、50歳になった今の方が投資家として才能があると思います。社会の仕組みもわかってきたし、バブルもいろいろ見てきました。年齢を重ねた上で投資をすることは、むしろおすすめかもしれません」
『無理なく貯めて賢く増やす パックン式 お金の育て方』
定価:1650円(税込)
出版社:朝日新聞出版
著者:パトリック・ハーラン
お金に苦労する環境の中で育ったというパックン。どうしたらこの状況から抜け出せるのかを考えて、見つけたのは「お金の育て方」です。 “誰だって真似できる”という「お金の育て方」の心得やノウハウを一冊の本の中で伝授します。大切なお金を守るためのおすすめの節約法から、無理なくお金を増やす投資法まで。投資家歴25年以上というパックンが自分の体験を交えてお届けします。この本を読めば、必要なお金の知識がばっちり身に付く、金融や投資を学びたい初心者にぴったりの本です。
プロフィール
パトリック・ハーラン(パックン)。1970年11月14日生まれ。アメリカ、コロラド州出身。ハーバード大学を卒業後、来日。英会話講師やモデルの仕事を経て、1997年、お笑いコンビ「パックンマックン」を結成。その後、情報番組などにレギュラー出演するなどし、人気を博した。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任。書籍も多数出版している。