ハーバード大学出身のお笑い芸人、パックンことパトリック・ハーランさん。大学講師や情報番組のコメンテーターとしてもマルチに大活躍しているパックンは、実は投資歴25年以上という投資のベテラン。
先ごろ、投資に関する本も出版したほどです。子どもの頃から新聞配達をして家計を支えるなどお金に苦労したというパックンが、お金について学ぶことや投資の大切さについてユーモアを交えながらたっぷり語ってくれました。(本稿は前編です)
もっとお金について話そう!
――日本人は普段の暮らしの中でお金の話をするのが苦手なように感じますが、パックンはどのように考えますか?
「日本で暮らして30年になりますが、日本人はあまりお金の話をしないなという印象があります。ブランド品を買ったときに『それ、かわいいね!いくら?』といった話はしますが、『老後のための貯蓄どうする?』とか『投資してる?』といった真面目なお金の話題は、僕が育ったアメリカより会話にあまり登場しないですね」
――それはどうしてでしょうか?
「日本のいいところでもあるんですよ。文化として“お金はいやしいもの”と考える部分もあると思いますが、日本ではお金のことを考えなくても、普通に暮らせるからだと思います」
「日本では、アメリカのように18歳になったから独立しなければいけないということはありません。成人が親元で暮らしていても恥ずかしくないですよね。これは日本の素晴らしいところだと思います。社会全体で中流階級が占める割合が高く、終身雇用の企業も多くて社会が安定している。危機感があまりなく、普通に暮らしていれば安心と考えている人が多いんだと思います」
「アメリカには、お金をかけたものを見せびらかすような文化があります。大金をかけて買った車や建てた家を見せ合うために、ホームパーティーをすることがあります。皆さんは、ホームパーティーとかしますか?あまりしないですよね。それって会社の人と仲が悪いからではなくて住宅事情のせいでしょう?結局大金をかけたものを見せ合う文化が、日本に根付いていないと思います」
「いずれにしても、日本では普段の会話にお金が登場する頻度が低くて、投資や節約、老後の備えといったリアルなお金の問題が話題になることが少ない。だから、少し金融リテラシーが低いように感じられます」
これからの女性は金融リテラシーも強くなる?!
――日本では、女性はさらに投資や貯蓄といった話をしないと思います……。
「女性は間違いなく金融リテラシーを高めたほうがいいと思います。女性の就業率が高くなり、シングルマザーのように1人で家計を支える女性も増えています。女性もお金に関して前よりコミュニケーションするようになったし、知識も増してきたと思うんです」
「また就業率が高くなると同時に、家庭を支える割合も大きくなっています。そして、家計を守るのはお母さんやお父さんだけではなく、子どもも含めて皆で守るものだと思うんです。だから、僕は子ども達にもストレートに家計について話をしています。『なるべくこれぐらいのお金で暮らしたい』とか、『年末に海外旅行に行きたいから、外食はしばらく控えようね』とか……。そういった話題を普通に家庭でしています」
「これからは、家計簿だけじゃなくて、経営術や投資方法といった金融リテラシーが高い女性が、いろんな組織のトップになったり、議員に選ばれたりするようになるんじゃないかな。今、日本はジェンダーギャップ指数の順位が146カ国中116位と低いけれど、そうなれば指数もアップして好循環になるよね。お金の話がしっかりできて、知識もノウハウも持っていることが、女性の将来にとって大事だと思います」
家族みんなで楽しむお金の勉強
――パックンの家庭では子どもにも家計の話をするということでしたが、日本ではそういった感覚があまりありません。子どもが家計に参加するための工夫などはありますか?
「第一ステップとしては、一緒に買い物に行くことですね。先に予算を話して、量や価格を比べて予算内に収まるように子どもに選ばせます。クーポンや特売の広告があったりしたら、『今日はこれが安いね、でも、安いからといって買うんじゃないよ。必要なものを安い時に買おうね』という話をしています」
「それから、光熱費の話もいいと思いますよ。光熱費などのコストは見えないじゃないですか。でも、お金がかかっていることを理解させることが大切なんです。例えば、瓶の中に100円玉を貯めて、『月末はこの瓶の中のお金で好きなものを食べようね。でも、電気にもお金がかかっているから、消し忘れたら100円玉を1個、瓶の中から取るよ』とか……。そうやって、電気にもお金がかかっていることを小さい頃から教えてもいいかもしれません」
「また次のステップとしては、『仕事を選ぶなら、将来どれぐらい稼げるか計算して比較することが大切だよ』とか、『投資をすればこういうこともできるようになるよ』といった話題を、ご飯を食べながら楽しく話すのもいいですね。日常の中でさりげなくお金について伝えることが大事だと思います」