有吉弘行(心の声)「大食いタレントだとは、絶対思われたくない」

 20日の『有吉クイズ』(テレビ朝日系)。クイズとは名ばかりに「着いて行きたいなってロケがひとつもない」(霜降り明星・せいや)と出演者が評するような頓痴気ロケが満載なこの番組だけれど、その代表格のひとつはやはり番組の看板である有吉弘行の食リポのロケだろう。黙々と食べ物を口に運び、味の感想をほとんど発しない。聞こえるのは骨付き肉にしゃぶりついたり、うどんをすすり上げたりする音ばかり。食リポ界の4分33秒(ジョン・ケージ)とでも呼べるようなそのロケを、私はいつも楽しみにしている。

 そんな有吉の食リポに、今回新たな展開が。有吉は以前からドラマ『孤独のグルメ』(テレビ東京系)のようなロケをやりたかったらしい。松重豊演じる主人公が1人で飲食店に入り、その心の声がナレーションのように重なり味の感想が述べられていくあのドラマである。ただ、本家では松重豊が食べるのもナレーションをつけるのもやるが、有吉版のそれは、有吉が食べ、ゲストがナレーションを入れる。今回のナレーターは俳優の高嶋政伸。ナレーションの原稿は、有吉がロケで発した言葉をもとにつくられているという。

 有吉が訪れたのは街の洋食店。有吉は注文に悩む。そんな映像に心の声としてナレーションが入る。店の前で「洋食屋は悩むんだよなぁ。オリエンタルライスもいいけど、おかずに白いご飯も捨てがたい」と悩み、店に入っても「オリエンタルライスと黒カレーのセット、やっぱりうまそうだなぁ。オリエンタルライス、黒カレーのセットに、Aセットをつけるってパターンもありなのかな」と悩む。

 注文を終えても悩みは続く。「さんざん悩んで注文してみたけど、本当にこのチョイスでよかったのか。メニューが多いからなぁ。組み合わせが何億通りもあるんだよなぁ」、「本音を言えば、ここに唐揚げをつけてもいいんだけど、欲張りすぎると下品に見えちゃうしなぁ。大食いタレントじゃないしなぁ。大食いタレントだとは、絶対思われたくない。いやぁ、ホントに難しいよなぁ、洋食の注文は」などなど。そして店を出たあとも、「でも、本当にこの注文の組み合わせでよかったのか」と悩むのだ。真剣に悩む小芝居をする有吉の表情や、スタジオにいる霜降り・せいやのツッコミなどもあり、まったく展開しない心の声の無限回廊に私は笑いが止まらなかった。

 味を伝えない食リポ。そのバリエーションはまだまだありそうだ。あと、大食いタレントがたくさん出てくる番組のMCを務める男に「大食いタレントだとは、絶対思われたくない」と何度もナレーションを重ねるのは、本人なのか作家なのか誰の発意か知らないけれど笑ってしまった。

 21日の『徹子の部屋』(テレビ朝日系)のゲストは片岡鶴太郎。片岡は、夜の10時に起き、朝の5時までヨガをし、そこから2時間半ほどかけて朝食をとる、という話をしていた。何度かテレビで本人がしてきた話だが、何度聞いてもキテレツである。

 なお、そんな“健康的”な生活を送る片岡が、インフルエンザにかかったときに語ったとされる言葉が私は大好きだ。爆笑問題の太田光いわく、「ヨガの意味、なんもないじゃないですか」とツッコんだ際、片岡は「ヨガやってたからインフルエンザが入る瞬間がわかった」と答えたという(『お願い!ランキング』テレビ朝日系、2019年11月6日)。

 ウイルスに罹患するのは生物として自然なことであり、ヨガはその生物としてのあり方に強引に逆らうものではないのだろうから、インフルエンザにかかったからといってヨガの意味がないとは思わない。けれど、夜10時に起き、朝5時までヨガをし、2時間半かけて朝食をとるという生活を1日も休まず何年も続けてきた成果が「インフルエンザが入る瞬間がわかる」という特に使いようのない能力だというのは、さすが、と感服せざるをえない。いや、本当にその瞬間がわかったのだとしたら、それはそれですごいことだ。人類の進化だ。だから片岡にはもっとヨガを極めて、次はニュートリノが体を通り抜ける瞬間とかわかってほしい。スーパーカミオカンデならぬ、スーパーカタオカンデになってほしい。

 さて、『徹子の部屋』で語られたところによると、片岡はほぼ1日1食だという。食べるのは2時間半かける朝食だけ。ちょうど寝るころに消化が終わり、「心地よい空腹感」のなかで眠りにつくらしい。これを聞いた黒柳徹子は「やっぱり(寝るときは)空腹にしといたほうがいいんですかね?」と質問。その後のトークは次のように展開した。

片岡「空腹にしといたほうが楽ですね。とにかく寝るっていうことは、自分が寝るっていうよりも、内臓さんを休ませてあげたいと思って」

黒柳「話違いますが、こないだ朝ドラにもお出になったんですよね?」

 話、全然ちがう。トークのなかで片岡から「内臓さん」といったワードが出たら、すべてのMCにこれをやってほしい。