◆彼氏が浮気をしたことで、逆に結び付きが強くなった
――浮気発覚から3年が経ち、2人の状況はとても辛いものになっていきます。彼と心中しようとする、という行動を選択したのはなぜだったのでしょうか。
浅野もねさん(以下、浅野):私が精神的に限界で「もう耐えられない」と思ったタイミングがあったんです。彼と生きていくのは無理だけど、彼と離れて生きていく自信もありませんでした。八方塞がりで、「もう終わりにしたい」と思っていました。
精神的な支えが、彼になってしまってたんです。おかしな話ですが、彼氏が浮気をしたことで逆に結び付きが強くなってしまった部分があります。同じ痛みを共有することで、私の辛さを1番知ってくれるのが彼氏になっていました。お互いに依存するような歪な関係だったので、片方が欠けると全てが崩れてしまうような気がしていました。
――浅野さんの最後の「お願い」を彼氏くんが受け入れたのはなぜだったのでしょうか。
浅野:たぶん、私のやりたいことは全てさせてあげたいという気持ちだったんだと思います。彼氏も仕事が上手くいかなかったりして追い詰められていたところがあったようです。私と結婚できないなら自分のことも終わりにしたいと思ったのと、私の面倒を見るのに疲れてしまっていたと思います。彼氏くんがテレビで介護殺人のニュースを見て共感していたこともありました。
◆彼氏くんが本当に好きだったのは?
――作品の最後に浅野さんは再び警察に保護されることになります。ご両親など周りの人はどんな反応をされていたのでしょうか。
浅野:母親は何も知らなかったので、すごく驚いて悲しんでいて「本当に申し訳ないことをしたな」と思いました。「もっと早く話してほしかった」と言っていました。
友達にも何も言っていなかったので皆「早く相談してくれたら」と言っていましたが、振り返っても「絶対に言えなかっただろうな」と思います。
「周りの人に言っていた方が辛かっただろうな」とか、「言ったところで私と彼氏くんの関係は変わらなかっただろう」と考えたり、ぐちゃぐちゃな感情がありました。ただ、周りの人に申し訳ないという気持ちがありました。
――この出来事を経て、浅野さんの恋愛観に影響はありましたか?
浅野:自分ではそんなに大きな影響はないと思っているのですが、人を信じることが少し怖くなったと思います。ただ、人の痛みがよく分かるようになったという点ではプラスになったのかもしれません。
恋愛や結婚に対してネガティブになってはいないし、支障が出たことはないと思います。
それ以外の部分では、仕事で辛くなっても「浮気されるよりはマシだ」と思えるようになりました(笑)。
――結局、彼氏くんが本当に好きだったのは浅野さんだったと思いますか?
浅野:「私も彼氏くんの浮気相手の1人だったのかな」と思ってしまったこともありました。でも彼氏くんが海外に住んでいて遠距離恋愛をしていた頃、会いに行くための渡航費用を彼が私に分からないように出してくれていたことを、後から人づてに聞いたんです。そういうことを知ると、「一応私が本命だったのかな」と思いました。