◆親愛なる僕へ殺意をこめて

俳優たちの演技合戦が最も素晴らしかったといえるのは『親愛なる僕へ殺意をこめて』(フジテレビ系)ではないでしょうか。1・2話での拷問シーンが、本当に地上波?! というほど過激で、離脱してしまった方もいるかと思いますが(…筆者もちょっと迷ったほど)、それ以上に出演陣全員の演技が光っていました。

連続殺人犯を父にもつ苦悩を表現し、二重人格の主人公を見事に演じ分けた山田涼介。その彼女でありながら、自身の過去によりサイコパスな殺人者に…という役柄を見事演じた門脇麦。主人公に寄り添い、控えめに物語を支えた川栄李奈の演技。そして主人公を追い詰めながらも、実は罪を犯していた刑事を演じた髙嶋政宏と、その部下を演じた桜井ユキ。何より、主人公の父に罪を着せた真犯人でありながら、主人公の育ての親でもある男を演じた遠藤憲一。皆がそれぞれに狂気を抱えており、その狂気をぶつけ合う演技合戦と心理表現に、とにかく圧倒された作品でした。

◆エルピス -希望、あるいは災い-

そして最後は、最終回まで全く展開が読めない『エルピス -希望、あるいは災い-』(カンテレ・フジテレビ系)。この秋、最も私たちを作品の世界観に引き込んだのではないでしょうか。名作ぞろいの秋ドラマの中で、あえてNo.1を決めるとしたら筆者は本作。圧倒的な物語展開×演者たちの奮闘が素晴らしかった…!

作り手の……出演陣はもちろん、脚本、演出、プロデューサーをはじめとするスタッフの本気度がとにかく凄い。さらに長澤まさみ、眞栄田郷敦、鈴木亮平が、思いもよらぬほどに人間の陰と陽を演じ切っておりそれだけでも魅了されてしまいます。

エルピス -希望、あるいは災い-
画像:関西テレビ/フジテレビ『エルピス -希望、あるいは災い-』公式サイトより
それに加えて、本当にテレビ局の人が作っているの?! と思わせるほど、冤罪(えんざい)、政治、報道、何よりも“正義”の在り方に鋭く切り込んでいく容赦のない物語展開には、脱帽です。まさに社会派エンターテインメント。

この秋、月曜日に『PICU』からの『エルピス』は重たすぎて、リアタイしなかったという視聴者も多かったのではないでしょうか。それほどに『エルピス』は訴えかけるパワーが強い作品でした。残すところあと1話……衝撃に備えましょう。