◆実は“いいやつ”ばかりじゃない、トーマス達を会社員に置き換えた

――本来は子供向けである『きかんしゃトーマス』を、“サラリーマン”というテーマにした理由を教えてください。

『サラリーマントーマス』第1話より
『サラリーマントーマス』第1話より
クドウナオヤさん(以下、クドウ):僕は今30代で、幼少期に『トーマス』を親と一緒に見て育ちました。僕と同じように『トーマス』を見て育った世代がいま親世代になって、子供に見せているという構造は昔から変わらないと思うんです。

 そこで、親世代に懐かしいという気持ちを呼び起こさせながら、自分の子供にも見せてみようと思ってもらうことを狙いました。社会人がトーマスの話を演じるという構造で、面白おかしくも、社会人への教訓になるような要素を盛り込むことで、トーマスの教育的コンテンツとしての発見となるような工夫を凝らしました。

――長い歴史を持つ『トーマス』には多くのエピソードがあります。どの話をドラマにするかという選択は難しかったのでは?

『サラリーマントーマス』第1話より
『サラリーマントーマス』第1話より
クドウ:まずは全シーズンをチームメンバーで分担して見直し、この話だったら社会人の教訓にしやすいかなという話をリストアップしていきました。トーマスたちって実は、毎回“みんないいやつ”なだけじゃないんですよね(笑)。へそを曲げたり足を引っ張ったりするエピソードを人間に置き換えてもチャーミングに見え、かつ学びやユーモアがある回の話に絞っていきました。

――原作では「汚い溝に落ちる」だった言葉がテロップでは「深夜残業をする」になっていたり、「考えておこう」が「ほおっておこう」になっていたりとセリフの変換も秀逸でした。会社員に置き換える際、参考にしたものはあるのでしょうか?

『サラリーマントーマス』第3話より
『サラリーマントーマス』第3話より
クドウ:僕も監督も元々会社員なので、“サラリーマンあるある”を散りばめたという感覚に近いですね。第1話の「ソシャゲ沼に落ちたトーマス」なら、勤務中にスマホをこっそり見ちゃうよねとか、第2話の「社員用トイレのもめごと」(原題:きかんこのもめごと)も男性トイレの個室って昼時は篭っている人が多いのか、けっこう埋まってるよね、みたいな会話から生まれていきました。

――第3話での「羊たちが草を食んでいる」の変換が「ジンギスカンがいい感じに焼けて草」なのは予想外でした(笑)。

『サラリーマントーマス』第3話より
『サラリーマントーマス』第3話より
クドウ:そうですね(笑)。SNSで反応してもらいやすいようネタとして入れたものもあります。例えば「それはいいね」という言葉を置き換える必要はないんですが、あえて「アグリーです」と、IT業界の人が面白がってくれそうな言葉を設定しています。1話からずっと同じ温度感で続けると失速する可能性もあるので、後半にいくにつれ監督と頭を悩ませながら、強引にこじつけたりとエスカレートさせていきました。