◆ずっとあった心残りを、どこかで発信してみたかった
――ご自身の辛い体験を作品にしようと思ったのはなぜだったのでしょうか?
浅野もねさん(以下、浅野):最初はポエムのようなものをインスタグラムに投稿していただけだったんです。それを4コマ漫画みたいな形にするようになって、今回の書籍の編集者さんに声を掛けていただいて漫画形式で描くようになりました。
私の中でずっと心残りのある出来事だったので、何らかの形で発信してみたいという気持ちがありました。2019年頃からSNSを始めたところ、沢山の人が匿名で赤裸々に身の上を語っているのが分かって、それに触発されて描くようになりました。
――「心残り」とは何だったのでしょうか。
浅野:自分の中で決着が付いていないところがあったんです。もう相手には会えないので、あの出来事について自分だけで解消しなければいけませんでした。でも、どうしても消化しきれないものが残っていました。
◆批判コメントに落ち込むこともあったけれど
――ショッキングな内容ですが、書籍化して読者が増えることで批判が増えたりすることに抵抗はありませんでしたか?
浅野:葛藤はあまりなかったです。声を掛けてくださった編集者さんの期待に応えることをモチベーションにして描いていました。
「相手がこの本を読んで私に連絡してきたら嫌だな」という気持ちは少しだけありました。でも読者に批判されることは心配していませんでした。インスタグラムで発表していた時から批判コメントはあったのですが、辛かった頃に比べたら、知らない人に批判されることはあまり苦になりません(笑)。「あの経験で強くなったから大丈夫」と思えるようになりました。
――執筆中はどんな心境だったのでしょうか。
浅野:途中、「描きたくない」と思ったこともありました。(本を出す前)インスタグラムに投稿していた時は、批判コメントに落ち込むこともあったし、当時の自分の日記を読むのが嫌すぎて長期間更新が滞ったこともありました。編集者さんが「一緒に頑張りましょう」と言って支えてくださらなかったら最後まで描くことができなかったと思います。