年内最後の金融講座は、毎年恒例、軽め(と言いますか、金融でない)内容でいきたいと思います。昨年はツイッター社本体の公式アカウントから発信されたおもしろツイートを訳しましたので、今年も何かないか探したのですが、マスク氏の買収騒動か、はたまたその後の大量解雇騒動のせいか、ツイート自体が少なく、これといったものが見つかりませんでした。仕方ないので、SF好きのわたしがぷぷっと笑ってしまった、かなり前の某ライターさんのツイートを取り上げることにします。

【本日の課題】
Stanley Kubrick was hired to fake the moon landing, but his perfectionism made them film it on location on the moon.
—Duncan MacMaster

このダンカン・マクマスターさんは何冊か本を出しているようですが、世界最大の書籍お勧めサイトgoodreadsによると、Film school survivor, pop culture junkie, reformed blogger, relentless tweeter, and unrepentant nitpickerだそうです(こういうのを訳すのもおもしろそうですね)。

さて、この文の背景に「有人月面着陸捏造論」があります。米航空宇宙局(NASA)が1960~70年代に行った月面着陸計画(アポロ計画)は、実のところ捏造であって、人類が月に行ったというのはウソだ、とする説です。英語ではMoon Hoaxと言いまして、月面上で撮った写真に星が映っていないだとか、月面に立てられた旗が(空気がないはずなのに)なびいているのはおかしいとか、こまごましたことを理由に、人類が月面に降り立った現実はないのだ!と主張しているわけですね。(いずれも完璧に論破されているようですが)

ニール・アームストロング船長は、月面上に記念すべき第一歩を記して、「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である(That’s one small step for a man, one giant leap for mankind.)」という名言を残しましたが、あの時の映像は、実は映画「2001年宇宙の旅」を監督したスタンリー・キューブリックがNASAに依頼されて撮影したものである、などというものもありまして、今回の課題はそれが元ネタになっています。

まあわたしも現地(月)で実際に見たわけではないので、100%真実とも捏造とも断言できませんが(笑)、ここは「捏造論を揶揄するツイート」ということでやってみましょう。昨年と同じく、まずはAI諸氏に訳してもらいます。

【本日の課題】
Stanley Kubrick was hired to fake the moon landing, but his perfectionism made them film it on location on the moon.

【Google翻訳氏】
スタンリー・キューブリックは月面着陸を偽造するために雇われましたが、彼の完璧主義により、彼らは月面でロケ撮影を行いました。

【DeepL氏】
スタンリー・キューブリックは月面着陸のフェイクを依頼されたが、彼の完璧主義によって月面でロケを行うことになった。

どちらも「完璧主義が彼らに撮影させた」にしていないところは偉いですけど、それでも「完璧主義によって」はあまりに直訳。というか不親切。Googleは、hisとthemをそのまま「彼」と「彼ら」にしちゃったんですね。「雇われた」もこの偉業(?)に相応しくありません。その点、DeepLはそのあたりをちゃんと考慮できていて、さすがではあります。

今回の場合、日常生活に関する文章ではないので、表現の押し広げようはあまりありませんが、もう少し手を入れることはできるかなと思います。