実在する複数の事件から着想を得た社会派エンターテインメント作品で長澤まさみさん主演の『エルピス-希望、あるいは災い-』(月曜夜10時、カンテレ制作・フジテレビ系)も、残すところあと2話。絶賛の声は高まる一方です。

エルピス恵那と斎藤
恵那(長澤まさみ)と斎藤(鈴木亮平)(C)カンテレ
『カルテット』(TBS系/2017年)などで知られる佐野亜裕美プロデューサー(以下、P)と、NHK連続テレビ小説『カーネーション』(2011年度下半期)などの脚本家・渡辺あやさんが6年がかりで作り上げた同作。TBSを退職後、カンテレに入社して『エルピス』を実現させた佐野Pに、前編に続いて話を聞きました。

◆斎藤は、佐野Pが「つい喋っちゃった話」が元になった

<物語の軸となるのは、犯人の死刑が確定した連続殺人事件。それを追いかけるのが、スキャンダルで看板ニュース番組を降板した女子アナ・浅川恵那(長澤)と、バラエティ番組の新人ディレクター・岸本拓朗(眞栄田郷敦)のバディだ。あるきっかけで、2人は連続殺人事件の冤罪疑惑の取材に奔走する。

恵那の元恋人・斎藤正一(鈴木亮平)は、2人の相談に乗りつつも、何か思惑を隠しているようでもあり――。>

佐野亜裕美さん
佐野亜裕美さん

――佐野さんが話すグチやテレビ業界の話から、渡辺あやさんがキャラクターやストーリーを作っていったと(前編で)伺いました。対話を通して出来上がっていったんですね。

佐野亜裕美(以下 佐野):私からオーダーしたことはほとんどなくて、雑談していたら勝手にできていた感じです。私の場合、作家さんとの打ち合わせでは、そうなることが多くて。素晴らしい作家さんに、私から余計なオーダーをして表現を狭めるようなことはしたくない。

何かネタになるかもと思って喋ることはあるし、渡辺あやさんはとても聞き上手なので、ついつい喋らなくてもいいことまでいっぱい喋っちゃうこともあって。斎藤正一(鈴木亮平)の人物造形も、つい喋っちゃった話が元になっているようです(笑)。

<斎藤は、エース記者で政界とのパイプも太い。恵那の元恋人で、物語途中でヨリが戻る。だが斎藤は、恵那が取材した冤罪事件ネタの放送をやめさせようとしていた。問い詰める恵那の髪をなでながら、斎藤がささやいたセリフ「じゃあ、なんでベッド買ったの?」は、SNSで大反響。デキる男の、魅力と嫌らしさがあふれ出る人物である>