チェッカーズが台頭し始めた84年、シブがき隊は9thシングル「喝!」で初のオリコン1位を獲得した。というか、彼らが1位を獲得したのは唯一この曲のみである。
この頃、シブがき隊がリリースした楽曲としては、「サムライ・ニッポン」、「喝!」、「アッパレ! フジヤマ」、「べらんめぇ!! 伊達男」などがある。改めてこれらを聴き直し、筆者は笑ってしまった。正直、どの曲もかなりキツいクオリティーなのだ。
デビューから解散までシブがき隊を担当した、元CBSソニーの音楽ディレクター・藤岡孝章氏が証言している。
「音程がめちゃくちゃで、元気よく歌うっていう。正直、これをデビューさせるのか? と(苦笑)。ハイレベルな楽曲だと(3人は)歌いこなせないんで」(藤岡氏)
特に、シブがき隊は布川が最も歌が下手で、ダンスも本当に適当だった。スタジオに登場したシブがき隊ファンの1人は、こう熱弁している。
「私たちはシブがき隊に歌のうまさもダンスのカッコ良さも、なにも求めていないんです!」
とにかく、3人がそこにいればもうそれでいい。ある意味、ファンの鑑だ。でも、それだけじゃない。シブがき隊にも、彼らならではのストロングポイントがあったらしい。番組が説いたのは、以下の3要素だ。
●メンバーカラーの元祖
今ではジャニーズの定番となっているメンバーカラーも、実はシブがき隊が元祖と言われている。本木が赤、薬丸が青、布川が黄だ。
●握手文化の元祖
AKB48よりずっと前に握手会を開催していた。
●ジャニーズ初モノマネ番組出演
番組内で、「歌い出しの声が小さすぎる中森明菜」、「失礼すぎる岩崎宏美の顔のマネ」といったネタを披露する本木のパフォーマンス映像が紹介された。
番組は上記3つのストロングポイントを紹介したが、この認識は明らかに誤りだろう。例えば、たのきんトリオにだって、田原俊彦=赤、近藤真彦=黄、野村義男=青というメンバーカラーがあったし、あおい輝彦が在籍した初代ジャニーズにもメンバーカラーはあった。あと、川崎麻世がジャニーズ入りした経緯は、彼がモノマネ番組で西城秀樹のモノマネをし、それを見たジャニーズ事務所が川崎をスカウト……という流れだったはずである。