◆silent/夏帆
最後に触れずにはいられないのが『silent』(フジテレビ系、木曜夜10時~)で、生まれつき聴覚障害をもつ女性・桃野奈々を演じている夏帆。
主人公・青羽紬(川口春奈)の元恋人で、若年発症型両側性感音難聴を患い、聴力を失ってしまった佐倉想(目黒蓮)に想いを寄せています。主人公の恋敵役ということで、はじめは少し“嫌な女”を想像してしまっていました。しかし、奈々は純粋に想に恋をしていて、その恋する女性の繊細な心の機微を夏帆は見事に表現しています。
◆手話で表現した“静”の怪演に涙が止まらない
しかも、夏帆の台詞はすべて手話なのです。特に第6話(11月10日放送)では、奈々の想いや想との思い出が描かれており、その切なすぎる心情表現に涙が止まりませんでした。
想と会話するために、手話を習い始めた紬に会いに行った奈々。はじめ、奈々は「手話上手だね」と優しく語りかけるも、「私が想くんに手話を教えたの」「プレゼント使いまわされた気持ち」「好きな人にあげたプレゼント、包み直して他人に渡された感じ」と、自身の気持ちを吐露しました。
また、好きな人と電話をしたり、手をつないで声で話したり、ハンドバックをもつことに憧れていること。それらを、手話と顔の表情だけで魅せてくれました。耳が聴こえないのに、想からの電話に耳で出ようとしたラストは号泣もの。
第8話(12月1日放送)では、紬が手話を習っている講師・春尾(風間俊介)と奈々の過去も明かされました。残り2話で奈々のとびきり幸せな笑顔を観せてほしいと願うばかりです。
<文/鈴木まこと(tricle.llc)>
【鈴木まこと】
tricle.llc所属。雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Twitter:@makoto12130201