旅情ミステリー作家・内田康夫による「浅見光彦」シリーズの初回ドラマが放送されてから40周年を迎えた2022年、新シリーズの続編『浅見光彦 源氏物語殺人事件』が、12月12日に早くも放送された。
新シリーズで令和版・浅見光彦に扮するのは、もちろん我らが岩田剛典。歴代俳優が体現してきた軽妙な浅見光彦像を踏襲しながらも、新たなイメージで鮮やかなイメージで書き換えていく。
「イケメンと映画」をこよなく愛する筆者・加賀谷健が、ふたつの古都を横断しながら、古から語り継がれてきた物語に新たな1ページを織り込んだ岩田剛典を読み解く。
◆ミステリアスなスポットひしめく鎌倉
旅行誌で記事を書くルポライターの浅見光彦(岩田剛典)が、ミステリー作家である軽井沢のセンセ(榎木孝明)に呼び寄せられて訪れたのが、鎌倉ときた!
神奈川県鎌倉市。神奈川県在住の筆者にとっても風光明媚な鎌倉の街は、格別な場所である。格別な場所に、格別な俳優である岩田剛典が、浅見光彦の姿を借りてやおらやってくる。これだけでドラマの要素が完璧に揃ってしまったようにも思うのだが、あともうひとつ、海が揃えば、黄金の三拍子。
しかし物語冒頭、光彦の姿は、由比ヶ浜を望む鎌倉中心部にはなく、北鎌倉にあった。「鎌倉五山のひとつ」という光彦のナレーションにある通り、円覚寺の山門を前に、まるで霊感を得たように、大木に手のひらを合わせる光彦は、古都にきた縁を全身で感じる。円覚寺には巨匠、小津安二郎監督が眠る。
今年は大河ドラマでもだいぶフィーチャーされた鎌倉だが、一方を海に、三方を山に囲まれた市内全体が、不思議な雰囲気に包まれ、とてもミステリアスなスポットでひしめいている。そこでさっそく、謎を秘めたひとりの女性に出くわした光彦もまた、すでに格別な出来事に胸を膨らませる。