そんな小説家にとって、何よりも報われる瞬間がある。それは、自分が生み出した作品が映像化されることだ。
ずっと孤独の中で書き続けた作中の人物たちが、俳優部のキャストの人たちによって演じられるのである。自分の生み出した作品に、数多くの人たちが携わってくれ、世に送り出されていくのだ。これほどまでに、書き手にとって報われることがあるだろうか。
歳を取るに連れ、「わくわく」するような感情は、そうそうなくなってくるのだが、今でも私は映像化が決まったその一瞬は、そうした感情で満たされるのだ。もちろん、そこがゴールではない。
映像化が決定しても、スタッフ陣やキャスト陣が力を貸してくれなければ、映像は完成しない。気がつけば、映像の仕事にかかわるのも7作品目となるので、監修者として現場に入ると、「もう帰りたい」ばかりしか考えていないが、今回のように原作も務めているときはやはり違う。一生懸命、走り回るスタッフも、お芝居をしてくれる俳優もすべてが愛おしくなるのだ。その後の反響だって、凄まじいではないか。
「昨日、テレビで観たけど、むっちゃ面白かったで!」
ドラマ『ムショぼけ』では、私の地元、尼崎で撮影したことから、かなりの反響をいただいた。だが、自分の作品を抜くのは、自分自身でなくてはならない。『ムショぼけ』という壁を、同作にも携わってくれた愛すべき人たちと『インフォーマ』で抜くことができたらよいなと思っている。
7年前か。小説家を志す中で、ようやく編集者と知り合い、わずかな道を開くことができた。そのときの原稿料は一本3000円で、その翌月、10数本分の原稿料として初めて50000円ほどが振り込まれた。その振り込みもとは「サイゾー」だった。嬉しくて母親に伝えると、「記念やねんから、そのお金は使わんとおいとくねんで!」と言われた私が、ここまで来たのだ。私だけでも、私のことを認めてやりたいと思う。
(文=沖田臥竜/作家)
『インフォーマ』
沖田臥竜/サイゾー文芸
12月5日発売/amazonで予約受付中
週刊誌記者、三島寛治の日常はひとりの男によって一変させられる。その男の名は木原慶次郎。クセのあるヤクザではあったが、木原が口にした事柄が次々と現実になる。木原の奔放な言動に反発を覚えながらも、その情報力に魅了された三島は木原と行動をともにするようになる。そして、殺人も厭わない冷酷な集団と対峙することに‥‥。社会の表から裏まで各種情報を網羅し、それを自在に操ることで実体社会を意のままに動かす謎の集団「インフォーマ」とはいったい何者なのか⁉
提供・日刊サイゾー
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