企画がなかなかうまく通らない時、どんな手を打つことできるでしょうか?

試訳に磨きをかけてレベルを上げ、企画書自体も細かいところを見直して全体的に完成度を高めていくことが考えられます。だけどそれだけではなく、大きく文脈を変えてしまうのも突破口になるかもしれません。

文脈をつくることについては、第197回「どうやって文脈をつくればいいの?」に書いていますので、参考にしていただければと思います。いったんつくった文脈を変えることで、違う読者層が見えてきます。

これはジャンルを変える場合にも通じます。たとえば専門書として出版しようと考えていたものを一般書にすると、読者層は専門家ではなく一般の方になります。そうすることで想定される読者数が増えるので、一定の販売見込みが立ち、企画が通りやすくなることがあります。ただ、専門書であればマニアックなテーマで出せても一般書では受け容れられないなど、メリットもあればデメリットもあります。

文脈を変えることでジャンルが変わる場合もありますし、ジャンルはそのままでも、原書の捉え方やアピールの仕方が変わる場合もあります。

どんなふうに文脈を変えるのか、具体的に考えてみましょう。『蜜蜂』という小説があります。これが未邦訳で、この原書の翻訳企画の持ち込みをしていると仮定してみましょう。本書はノルウェー発の小説です。まずは小説として売り込むのがいちばん妥当でしょう。その場合、小説としての注目度や売り上げをアピールしていくことになります。また、ノルウェー発であることから、北欧系の作品が注目されてきた文脈に位置づけることもできるでしょう。

だけどそれでうまく通らない時に、本書のストーリーで環境問題が関わってくることに注目できます。本書には、蜂群崩壊症候群の話題が登場します。この話題は農薬との関連で環境問題の中で注目されています。そのため、蜂群崩壊症候群を扱った小説として、この問題が引き起こす将来を考えさせる教材になるという観点から、環境意識の高い層に訴えかけることもできるでしょう。環境問題という文脈で別の位置づけができるのです。