◆運転に自信がなくなった義父に免許返納を提案すると……

悩むシニア男性
 大した事故ではなかったものの、ベテランドライバーの義父にとっては初めての交通事故。精神的なダメージは非常に大きかったそう。

「初めての事故はショックが大きかったようで、『運転に自信がなくなった』と落ち込んでいました。車に乗ることを避けるようになり、義家族の買い物の際には夫か私が車を出すようになったんです」

「もう運転したくない」と落ち込む義父に、ミサさんと夫は免許返納を提案しました。

「次にもっと大きな事故を起こしたら大変だから、思い切って免許を返納してみるよう提案したんです。免許返納によって受けられる、公共交通機関の割引などの特典についても説明したのですが……断られました。『俺は運転だけで生きてきたんだ。返納なんかできない』と、ベテランドライバーとしてのプライドがあるようでしたね」

 自主返納をすると、各自治体においてさまざまな特典が用意されています。

 公共交通機関の割引だけでなく「高齢者運転免許自主返納サポート協議会」の加盟店にて、タクシーやバスの運賃割引、商品券の贈呈、美術館、飲食店の料金割引など、さまざまな特典が受けられることもあるのです。

◆転機となった車の売却

免許 返納
 免許返納は断ったものの、義父は一切運転することはなくなったそうです。それから2カ月が過ぎた頃、義父は「車を売却したい」と言い出したのだとか。

「もう運転したくないし、維持費だけかかるのはもったいないから売りたいと言い出しました。そのとき、私、ピンときたんです。以前調べたときに、免許を返納すると車を売却するときに特典を受けられることがあるっていうのを見たなと」

 中古車買取業者によっては、自主返納後に取得できる「運転経歴証明書」を提示することで買取金額が上乗せされることがあるんだとか。

 さっそく、そのことを義父に伝えたミサさん。すると義父は「車を売っちゃえばもう運転することはないだろうし、特典も受けられるなら、返納しようかな」と、気持ちが変わったそうです。

 その後、免許を返納した義父。それからは義母との2人旅では新幹線や飛行機などを使うようになり、車での旅行よりも遠くへ行けるようになったと喜んでいるそう。

「『長年トラックドライバーをしてきたからプライドがあったけど、視野が狭くなっていた。新幹線と電車を乗り継いだり、飛行機から街並みを見下ろしたりするのも、いいものだな』と、新しい旅の楽しみ方を見つけたようです」