YonYon、80KIDZ、TENDRE、D.A.N.、土岐麻子、glowingdog、sogumm、butaji、Miru Shinoda(yahyel)、Micro(Def Tech)――これらはすべて、三宅健の初ソロ作品『NEWWW』に参加したミュージシャンである。コアな音楽ファンにしてみれば、ちょっとしたフェスでも開催できそうな好ラインナップである一方、三宅健ってこういう音楽が好きだったのか、と驚いた人も少なくないのではないか。V6を含め、アイドルグループとは“異なる個性の集合体”であり、ゆえにそのパブリックイメージとは違った音楽的嗜好を持つメンバーがいるのは不思議なことではない。ただ、それがファン以外にまで伝わる機会は案外少ないものである。
もっとも、グループ時代の作品にも、今作へのヒントはあった。V6といえば「愛なんだ」や「WAになっておどろう」といったポジティブなダンスナンバーが代表曲として認知されるが、その一方でグループの成熟に伴い、音楽性を大胆に拡張していった。特にAmPmらによるコライトで制作された全編英詞の「All For You」(2019年)、田尻知之(note native)と本澤尚之(Language)の共作「MAGIC CARPET RIDE」(2021年)などで見せたシックなクラブミュージック路線は、『NEWWW』の世界観に近いものがある。また2021年にリリースされたV6最後のオリジナルアルバム『STEP』における三宅プロデュースの楽曲では、ロックバンド・Tempalayとのタッグが実現している。彼らの持つサイケなエッセンスをポップに昇華した「分からないだらけ」で見せた不穏さとメロウネスの共存したサウンドも、新作に通じる部分がありそうだ。
そんな流れを踏まえて発表された『NEWWW』では、更に刺激的なダンスミュージックに挑戦している。冒頭を飾る「Destination」でタッグを組んだのは、YonYonと80KIDZ。2組が以前コラボした80KIDZ「Your Closet feat. YonYon」を三宅が聴いていたことからオファーがあったのだという。この曲と同様、「Destination」も日本語・英語・韓国語を自在に行き来するエレクトロナンバーで、同じ布陣で制作されたもう1つの楽曲「Day by Day」との連作となっている。
TENDREプロデュースによる「PULSE」はベースの音色が耳に残るアダルトなR&Bナンバー。TENDREの人気曲「RIDE」あたりの作風に近いだろう。D.A.N.が手がけた「FALL」は、ヴォーカル・櫻木大悟のファルセットをフィーチャーしたミニマルなクラブミュージックだ。ほぼ英詞で構成され、後半わずかに繰り出される日本語のフレーズはよく注意していないと気付かない。歌モノポップスとして成立するギリギリのラインではと思うほどの没入感あるダンスナンバーとなっている。
「SUNSHINE」は韓国のシンガーソングライター・sogummの書き下ろし曲。三宅は彼女の楽曲「야유회(yayou hoi)」が好きだそうで、今回は同曲を共作していたglowingdogも制作に参加している。また作詞にはK-POPファンとして知られ、V6の楽曲も手がけていた土岐麻子が名を連ねた。ボサノバ調のAメロからエレクトロサウンドへの展開は大胆だが、チルなサウンドは通底しており、心地良いグルーヴに身を委ねられる楽曲だ。