「1人4役」の山田涼介を始めとした俳優陣の「オモテとウラの演技」

 ドラマのラストは、大学生活に戻ったB一の姿だった。友人のやり取りを眺めながら笑顔を浮かべるその姿は、「浦島エイジ」ほど屈託のないものではなく、復讐に燃えていた暗い「B一」の表情でもなく、「八野衣エイジ」の新たな人生を思わせる笑顔だった。

 この山田の演技に象徴されるように、本作の一番の魅力はやはり俳優陣の鬼気迫る演技だっただろう。主人公は二重人格という設定だったが、実際に山田の演技は、「浦島エイジ」「B一」に加え、「浦島エイジのふりをするB一」、そしてラストの「浦島エイジと統合された八野衣エイジ」という「1人4役」に及び、これを見事に演じ分けてみせた。

 また、ドラマオリジナルキャラクターであるナミをのぞけば、メインの登場人物の大半が表と裏の顔を持ち合わせていた。浦島エイジのかわいい恋人かと思いきや、LLと「LLの息子」に執着する闇を抱えた女性だった京花役の門脇麦。事件を熱心に追う刑事でありながら、上司が八野衣真を殺したことに目をつむり、B一を消そうとした桃井役の桜井ユキ。そして、優しい義父から殺人鬼LLの正体を暴かれた際の静かな変貌ぶりに「知っていたけど、さすが!」との声が多く上がった遠藤憲一。負の連鎖によって救われない登場人物ばかりの難しい内容のドラマだからこそ、この配役が生きたのだ。

 原作からは一部設定やストーリー展開の変更はあったが、原作版のヒロインである真明寺麗よりも、ドラマのナミのほうがエイジ/B一に協力する理由がわかりやすかったし、桃井がサイ(尾上松也)にも脅されていたというドラマ版の変更は、桃井の“地獄”がより強調されていた。全9話にコンパクトにまとめられたものの、大筋のストーリーは変わっておらず、原作ファンもドラマファンも納得のいくエンディングとなっただろう。拷問殺人を行う殺人鬼の話が根底にあるだけに、ショッキングな第一話の演出で損をしてしまった印象があるが、“ドラマのフジテレビ”の底力が感じられた作品だった。


提供・日刊サイゾー

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