一般的には不倫を善とする考え方は、今の世の中にはない。一夫一婦制が敷かれている以上、やむをえないのだが、恋愛は人の感情が強くからみあうものだから、一方的に「悪」と断罪するのもしのびない。
そんな中でも「ついつい、しちゃいますが、夫にわからなければなかったことにしています」とあっけらかんと言う女性がいる。
人を好きになるのはどうしようもない
結婚して12年。小学生の子どもがふたりいるアキノさん(39歳)は、結婚して数回、婚外恋愛をしたという。
「不倫っていう言い方はどうも気に入らないんです(笑)。結婚外の恋愛だから、私は婚外恋愛と言っている。だって恋愛ですもん、本気だし」
彼女は恋愛を結婚に結びつけない。だから結婚生活と恋愛は別ものだという理屈。好きな人ができれば、「好き」と自ら告白する。
「私が結婚しているからつきあえないという人はいます。それはそれでしかたないですよね、相手の価値観ですから。
結婚というのは私の属性で、それはついて回るものではあるけど、既婚であるかどうかとか年齢とかが理由でつきあえないというのは本来、おかしいと思う。私の中身をしっかり見てないということだから」
そう言いながら、こういう理屈っぽい女はモテないんですよねと笑った。男性から「かわいい」と言われるのが嫌い、恋も友情もつきあうなら「ガッツリ」関わりたいというアキノさんは、当然ながら夫ともしっかり関係を築いている。
「私、結婚しても恋愛しちゃうかもしれない」
「家族は仲良しですよ。夫とはときに朝まで議論したりもする。別にむずかしいことを話しているわけじゃないんです。お笑い芸人のどっちがおもしろいかで、朝まで議論(笑)。友人たちからはバカにされています」
彼女はもちろん夫をきちんと「男として」見てもいる。それなのに、他の男性に心惹かれるといても立ってもいられなくなるのだという。
「実は夫は、私が恋すると行動を起こさずにいられないことを知っています。学生時代からのつきあいだから。
結婚するとき、『私、結婚しても恋愛しちゃうかもしれない』と言ったんですよ。そうしたら『それがアキノだからね』と言われました。
私は家庭の中では怪しい動きはしていないつもりだけど、夫はどこかで察知しているかもしれない。それでも何も言いません。夫と私の関係は変わらないとわかってくれているんだと思う」
ずいぶん身勝手でしょとアキノさんは笑った。だがその「身勝手」を貫ける人はそういない。