川口春奈主演、目黒蓮共演のドラマ『silent』(フジテレビ)が、ファンを増やし続けている。動画配信サービス『TVer』上では再生数が歴代最高記録を塗り替え、『silent シナリオブック完全版』に予約が殺到するなど、社会現象になっています。第8話では、青羽紬(川口)と佐倉想(目黒)が、ふたたびともに歩き始めたからこそ生じる揺れにぶつかりつつ、また一歩前に進んだ。

 1993年に放送された『ポケベルが鳴らなくて』から、電話に付随するやりとりは、フィクションをドラマチックに盛り上げてきた。しかしケータイ、殊にスマホ(インターネット)が普及してからというもの、生活はあまりにも便利になり、ドラマ作品においても登場人物たちのもどかしいやりとりが極端に減ってしまった。しかし『silent』は、スマホをドラマチックアイテムとして見事に復活させている。

◆電話は“すれ違い”を生み出すアイテムだった

電話は“すれ違い”を生み出すアイテムだった
国武まり「ポケベルが鳴らなくて」(トライエム)
『ポケベルが鳴らなくて』は、秋元康原案・企画による、緒形拳主演、裕木奈江共演の不倫ドラマであり、同名の主題歌も大ヒットした。ポケベルと聞いても、今の世代はピンと来ないに違いないが、このガジェットは、誰かが誰かと連絡を取りたい際に、「私に連絡をください」という信号を送るだけの機器だ。どういった用件かは、実際に連絡がつかなければ分からない。しかし相手が自分と連絡を取りたがっているという事実だけで、恋人たちは胸を焦がした。

 さらに、かつて電話といえば家に置いてある固定電話のみだった。電話の先にはコードがあり、繋がっている範囲しか移動できない。みな、リビングや廊下に設置された電話の前で話をした。家族共通の機器でもあるため、相手の家に電話をすると、家族が受けてしまうというスリリングな面もあった。遠い昔に思えるが、意外とほんの少し前の話でもある。