おとり広告には罰則などが課されるが……

このほか、トラブルにもつながりやすい不動産業界の事例に「おとり広告」がある。おとり広告とは、実際に部屋の賃貸主や購入主を募集していないにも関わらず、顧客からの関心を寄せるために物件情報を店舗で表示したり、仲介サイトに掲載したりすることだ。

宅地建物取引業法(宅建業法)や不動産の表示に関する公正競争規約(公正取引委員会告示第23号)では、トラブルを誘発するおとり広告を禁止している。

宅建業法では第32条で、宅建業者(不動産会社)が物件を広告として表示・掲載する場合について、「著しく事実に相違する表示」「実際のものよりも著しく優良若しくは有利であると人を誤認させるような表示」の2点を禁止している。罰則としてはその悪質性によって、「指示」「業務停止」「免許取消」などに分かれ、6月以下の懲役か100万円以下の罰金も定められている。

不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)の第21条では、「物件が存在しないため、実際には取引することができない物件に関する表示」「物件は存在するが、実際には取引の対象となり得ない物件に関する表示」「物件は存在するが、実際には取引する意思がない物件に関する表示」をそれぞれ禁止し、違反した場合は違約金課徴などが課されるケースがある。

依然として存在する「おとり広告」の実態

実際に、トラブルにも結びつきやすいおとり広告はどれほど存在するのか。公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会が2018年1月に公表した「インターネット賃貸広告の一斉調査報告(第2回)」の結果を読み解いていきたい。

調査は、国内5社が運営する不動産情報サイトに賃貸物件を掲載している52社の賃貸住宅1059物件に対して行った。同協議会がおとり広告を行っている疑いがあると判断した事業者などを主な対象にしている。

その結果、調査対象となった52社の事業者のうち、19.2%にあたる10社が違反しており、店舗ベースでは67店舗のうち14.9%にあたる10店舗で違反が確認された。全調査対象物件における違反数は18件で、全1059件の1.6%となる結果となった。

この調査結果は、不動産業界において依然としてトラブルを誘発するおとり広告が存在していることを裏付けするものとなった。

徒歩所要時間をめぐるトラブルも

実際に存在しない物件の表示・掲載のほか、最寄り駅から物件などの徒歩所要時間や条件の非表記、物件設備の誤表記、支払料金額の不明瞭さなどもトラブルに結びついているケースが多い。実際に不動産店で物件の賃貸契約や売買契約を結ぶときは、こういった点にも注意したい。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)/ZUU online

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