◆アコースティックギターでしか出せない空気感

 最後にアコースティックギターだけのアレンジにも触れたいと思います。

 筆者が「香水」のMVを見たとき、すぐに思い出したのがアメリカのハードロックバンド、エクストリームの「More Than Words」でした。右手の親指で弦をカチっと鳴らしてリズムを取る弾き方と、アコースティックギターでしか出せない親密な空気がそっくりなのですね。

 ギターのラフでカジュアルな魅力が、“ドールチェアーンドガッバーナ~”のユーモラスな響きを増幅させたのではないでしょうか。もちろん、タイ語バージョンでもこのアレンジは効いています。

 以上の3点から、誰にでもアクセスしやすい曲であることを考察しました。たとえるなら、ユニバーサルデザイン的なわかりやすさ。なのでタイでも勝機はあり、と見ます。

 果たして「香水」は令和の「上を向いて歩こう」や「北国の春」となれるのでしょうか? 注目していきましょう。

<文/石黒隆之>

【石黒隆之】

音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4