◆タイ語版を聞いてみると…違和感のなさに驚き

 結論から言うと、これイケそうじゃない? 最初からタイ語の歌だったと言われたら信じちゃうぐらいの違和感のなさ。

 当然、筆者はタイ語がわかりません。なので日本語詞の意味がどれくらい再現されているかは知るよしもないのですが、なによりも音として自然なのです。

 日本でヒットした当時は、“あ~、いかにも一発屋な曲ね”とタカをくくっていたものが、実はしっかりした楽曲なのだと再認識しました。

 他の言語でも揺らがない強さ。それを支えるのがメロディです。まるで子守唄か童謡みたいに素朴なのに、妙に耳に残る。なぜ残るかと言うと、歌詞の言葉の音を粗末に扱っていないからなのだと思います。一つの音符に複数の音節を無理に詰め込まない。呼吸のタイミングが一定なので心地よく聴けるのですね。

 タイ語でもこの誠実な呼吸が残る。改めて根っこがしっかりしていると感じました。

◆シンプルなコード進行は“バズりやすい”

 もう少し具体的な話をすると、曲を通して全部同じコード進行なのも強みです。(A♭→B♭→E♭)×2、A♭→B♭→G7→Cm7 A♭→B♭→E♭ この組み合わせの8小節を繰り返すだけの構造になっています。同じコード進行の中で、歌詞の盛り上がりに合わせてメロディを動かす。それが曲のトーンを作っているわけですね。

 超シンプルな構造は、“歌ってみた”系動画がネットでバズるうえでアドバンテージとなります。覚えるコードが少なくて済むので、楽器初心者でも挑戦しやすい。間口が広くなるからです。

 イギリスのシンガーソングライター、エド・シーランもこの作風を得意にしています。タイでもこのシンプルさはウケるでしょう。四の五の言わずにとりあえずやってみたい気持ちにさせる曲なのです。