昔の人も“腸脳関係”を感じていたのかも
小林 先ほど、腸に行動が支配される感覚とおっしゃいましたが、ありえることです。我々は頭で思考していると思っているが、実は腸が先に考えていて、脳に指令を出している可能性だってある。
悲しくつらいことを「断腸の思い」と言ったり、ひどく腹立たしいことを「腸(はらわた)が煮え返る」と言ったり。腸に関することわざが多いのも、昔からの人が感じていたことが、今、科学的に証明されてきているのかもしれません。
加治 哲学の世界に近いですね。先生の本を読ませていただくと、腸活や自律神経のお話なんだけど、そこからいろいろなことに考えが広がっていくんです。最近は「悪玉菌」という言い方をしなくなっているというお話も面白かったです。
小林 最新の栄養学では善玉菌は有用菌、悪玉菌は有害菌と呼ぶようになっている。なぜかと言うと悪玉菌の中でもいいことをしている菌はいっぱいある。それなのに、悪玉菌と言われてかわいそうなんです。
悪玉菌は必ずしも“悪者”ではない
加治 何も知らない人は、悪い菌ならなくなればいいと思ってしまいます。
小林 悪玉菌の中にも役立つ菌があるので、有用な菌とそうでない菌とをはっきり分けたほうがいいだろうという流れが出てきたのです。
少し補足しておくと、食物繊維の分類も「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」という分け方から、「発酵性」と「非発酵性」に変わろうとしています。というのも、有用菌が作り出す「短鎖脂肪酸」が免疫力や老化、肥満に深く関わることがわかり、それには発酵性の食物繊維が必要だから。発酵性食物繊維は腸内で発酵して、その有用菌のエサになってくれる食物繊維なんです。