短期間で終わり、その間、特に以前と変わった行動をとらなければ不倫は配偶者にバレないのかもしれない。
だが、人は「快楽」には溺れやすいもの。恋をすれば身のこなしひとつとってもそれまでとは変わってくるものだ。
だから不倫はバレやすい。
写真はイメージです(以下同)
初めての恋だった
「あれは人生で初めての恋だったんです」
トシアキさん(40歳)は少し照れたようにそう言った。28歳のとき、同じ会社で働いていた2歳年上のチナツさんと結婚。すでに妻は妊娠していた。
結婚生活も落ち着かないうちに女の子を出産。それでも生まれた子を見たときは涙で目がかすんだという。
「新しい命が形になって見えたことで、言葉が出ないほど感動しました。小さなこの子を守るためならなんでもする。そう決めたんです」
妻のチナツさんは出産を機に転職、産後は家でできる仕事を請け負った。娘が生後8ヶ月のときに近くの保育園に入れることができたため、出社可能となった。
「チナツは仕事人として僕よりずっと有能なんです。だから彼女がフルで働いて、僕がパートなどの仕事に切り替えてもいいと思っていた。だけど彼女の中には、『男はきっちり稼いでくるもの』という認識が強くて、それはかないませんでした」
転職後はチナツさんのほうが収入が多かったため、トシアキさんは少し肩身が狭かった。家事育児も一生懸命やったが、「要領が悪い」と怒られることもあった。それでも彼はチナツさんに逆らうことはなかった。
「娘のためと割り切っていました。娘さえ元気に育ってくれれば他のことには目をつぶれると思っていたから」
4年前、娘が無事に小学校に入学したときは心からホッとしたという。気が抜けたような寂しいような、それでいて誇らしいような複雑な気持ちだった。
「保育園時代は毎日僕が送っていって、帰りも半分以上は僕でした。チナツは気が強くてせっかちで、ママ友さんともうまくいっていなかった。僕のほうが親しいママ友ができたりして、『あなたは男にしておくにはもったいない』とよくチナツに言われたくらい(笑)」
そのころのママ友とは子どもたちが小学生になってもつきあいが続いた。別々の小学校に行っても気が合った仲間が3人いたのだが、3年前、そのうちのひとりトモミさんから相談を受けるようになった。
夫との関係を相談されて
トモミさんは夫からのモラハラに悩んでいた。
「彼女には3人の子がいるんです。フリーランスとして家で仕事をしているので、夫からみると『遊んでいるのに保育園に預けている』と思われていると前から話は聞いていました。夫は一回り年上で、会社を経営し、もちろん高収入。それなのに彼女には生活費を月々10万も渡さない。子ども3人ですよ。足りるわけがないですよね。
彼女のいちばん下の子がうちと同学年だったんですが、末っ子を小学校に入れたら急にどっと疲れが出たみたい。同時にそのころ夫の浮気が発覚して、いつも元気がなかった。それで相談に乗ったり、僕が平日に代休をとったときに一緒にランチをしたりしていました」
あくまでも「保護者としての友だち」だったのだが、ふたりで会うようになってから、知らず知らずのうちにトシアキさんの心が変化していった。
「なんだかトモミちゃんのことを考えると胸が痛む。今どうしているのかとか、ふと彼女の声が聞こえるような気がするとか、そんなことが増えていった。わからなかったんですよ、それが“恋する気持ち”だということが。僕はほとんど恋なんてしたことがなかったから」