へそくりが妻のものなら相続税や贈与税が課税される?

へそくりを妻のものにするには、夫婦間で贈与契約を締結し、夫から妻へ財産を贈与する必要があります。贈与された財産を生活費と区別し、妻名義の口座で管理すれば妻の財産として認められます。ただし、その場合はへそくりが贈与税の課税対象となってしまいます。

贈与額が基礎控除額110万円を超える場合は、贈与税の申告をして税金を納めなくてはなりません。

また、夫が亡くなって相続が発生すると、専業主婦が貯めたへそくりは相続財産に含まれます。相続税申告の際にへそくりを相続財産から除外すると、「へそくりは夫の財産であり、相続財産に含まれる」と税務署から指摘を受けるかもしれません。状況によっては、修正申告や税金の追加納付を求められる可能性もあるので注意が必要です。

ただし、相続税には配偶者の税額を軽減する制度があります。相続財産が「1億6,000万円」と「配偶者の法定相続分相当額」のどちらか多い金額までは、配偶者に相続税はかかりません。

配偶者は、被相続人(夫)の財産形成に深くかかわっています。また、税負担が重くなると今後の生活への影響が大きいため、他の相続人に比べて相続税が優遇されています。

へそくりが相続財産に含まれたとしても、多額の遺産を相続しなければ、相続税が課税される可能性は低いでしょう。

一般的な常識と税務の考え方はギャップが大きい

専業主婦がこっそり貯めたへそくりは、税務上は原則として夫のものになります。「夫からもらった」と主張すると、贈与税が課税されるかもしれません。へそくりは相続財産に含まれますが、相続税には配偶者控除があるため、税負担の軽減が期待できます。

「がんばって貯めたへそくりが夫のもの」というのは納得できないかもしれませんが、一般的な常識と税務の考え方には大きなギャップがあるので注意しましょう。

著者・大西勝士
AFP、金融ライター。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。FP資格や投資経験をもとに、大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。

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