今回は、こちらのご質問にお答えします。

「翻訳を手がけたいと思う原書を見つけたのですが、10年ほど前に出版されたものでした。このような古い原書でも出版翻訳の対象になるのでしょうか?」

私も10年ほど前に出版された原書を持ち込んで翻訳したことがあります。古いからダメ、ということはありません。「その原書自体の価値」と「日本の読者にとっての価値」の両面から考えてみましょう。

まずは、「その原書自体の価値」について見ていきます。新しい情報を伝えることを目的にした本は、その性質上、どうしても陳腐化しやすいものです。たとえばZOOMの活用法についての本は3年ほど前ならまだ目新しさがあったでしょうが、一般的に用いられるツールになった現在では、すでに陳腐化してしまいました。

逆に普遍的な内容の本であれば10年くらいで価値が損なわれることはありませんし、むしろその10年間読み継がれてきたことが原書の価値を高め、プラスに作用するでしょう。

また、発売当時に新しい理論やメソッドを提唱した本で、現在では目新しいものではなくても、そこから派生した様々な理論やメソッドが発展を続けていたとします。するとその本がいわば「源流」のようなものですので、その意味で価値があると考えられますし、読者は多く存在するでしょう。