会社員の方は、将来の年金として毎月厚生年金保険料が給与から引き落とされています。しかし、もし自分が年金を受け取る前や、受け取っている最中に万が一のことがあったら、残された家族はどのぐらい年金を受け取れるのでしょうか。今回はその種類とおおよその金額をご紹介します。

会社員の遺族年金の基本「遺族厚生年金」

まず、会社員の残された家族の基本となる遺族年金が、厚生年金保険から支給される「遺族厚生年金」です。この遺族厚生年金は、亡くなった方が受給する予定の、または受給していた額の4分の3が支給されます。

厚生労働省は毎年「夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額」を発表していますが、これによると、2021年度の夫婦2人分の標準的な年金額は、表1の額となっています。

表1. 夫婦2人の標準的な年金額(月額)

夫の国民年金
(老齢基礎年金の満額)
6万5,075円
夫の厚生年金
(平均的な年収で40年間就業した場合)
9万0,346円
妻の国民年金
(老齢基礎年金の満額)
6万5,075円
夫婦2人の年金額合計 22万0,496円

表1のケースでは、夫の厚生年金90,346円の4分の3である6万7,760円が、遺族厚生年金として残された家族に支給されることになります。

なお、このモデルケースは40年間働いて今は引退している夫婦の例ですが、現在働いていて、厚生年金保険への加入が短い(300月(25年)未満)の場合、今までの平均年収で300月働いたとして計算した額が支給されます。

例えば、入社5年目(60月)の会社員が亡くなり、その人がもらえる予定だった厚生年金が月額1万円の場合、残された遺族に支給される遺族厚生年金は、

1万円×(3/4)×(300月/60月)=3万7,500円 となります。

子どもがいる配偶者のための「遺族基礎年金」

残された配偶者に、高校生以下、もしくは20歳未満の障害のある子どもがいる場合、国民年金から「遺族基礎年金」が支給されます。

支給額は、「年額78万900円+子の加算額」で、子の加算額は第一子と第二子がそれぞれ22万4,700円、第三子以降は各7万4,900円です。

子どものいない妻に支給される「中高齢寡婦加算」

遺族基礎年金は子どものいない配偶者には支給されませんし、子どもがいても18歳(障害を持つ場合は20歳)に達すれば支給されません。しかし、夫が死亡した時に40歳以上で子どものいない妻には、40歳から65歳になるまでの間、遺族厚生年金に「中高齢寡婦加算」が加算されます。

支給額は、58万5,700円(年額)です。支給が65歳までなのは、65歳になると妻は自分の老齢基礎年金を受けられるからです。

老齢基礎年金の額が中高齢寡婦加算より少ない場合に、65際以上の配偶者に「経過的寡婦加算」という年金が支給されますが、これは1956年以前に生まれた人に限られます。

未支給の年金があれば請求できる

これまで紹介した遺族年金以外にも、残された親族は「未支給年金」を受け取れることがあります。未支給年金とは、亡くなった人が亡くなる前に受け取れるはずだった年金です。

年金は原則として、亡くなった月の分まで受給できますが、支給は2ヵ月分を後払いのため、必ず未支給年金が発生します。

例えば、年金受給者が7月に亡くなった場合、年金は7月分まで受け取れますが、7月分の年金は6月分と合わせて8月に支給されます。つまり6,7月分が未支給の年金です。

この未支給年金は遺族年金を受給できる遺族の他に、亡くなった人と生計を同じくしていた3親等内の親族が含まれます。特に遺族年金を受け取れない親族の方は、忘れず請求しましょう。

万が一の時の年金額を知っておこう

夫や妻に万が一のことがあった時、どれぐらいの年金が受け取れるのかを知っておくことは、残された家族のための保険や貯金を考える際に欠かせない情報です。自分がどういった種類の年金の対象になるのか、またそのおおよその額はいくらぐらいなのか、しっかりと確認しておきましょう。

文・松岡紀史(ファイナンシャル・プランナー、ライツワードFP事務所)

文・
肩書・ライツワードFP事務所代表/ファイナンシャルプランナー
筑波大学経営・政策科学研究科でファイナンスを学ぶ。20代の時1年間滞在したオーストラリアで、収入は少ないながら楽しく暮らす現地の人の生活に感銘を受け、日本にも同様の生活スタイルを広めたいという想いから、 帰国後AFPを取得しライツワードFP事務所を設立。家計改善と生活の質の両立を目指し、無理のない節約やお金のかからない趣味の提案などを行っている。

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