レントゲンは放射線を使う!放射線の胎児への影響は
では、妊娠初期に放射線を浴びてしまった場合、胎児にはどんな影響が出てしまうのでしょうか?妊娠初期に一定量以上の放射線を受けると、胎児に奇形や発がん、流産、発育遅延などの影響が出ると考えられます。胎児に影響が出るとされる放射線量の基準は、100~200mGy(ミリグレイ)以上といわれています。
ご存知のように普段、被ばく線量で使われる単位はmSv(ミリシーベルト)やSv(シーベルト)です。ただ、胎児の被ばく程度を表すときには、放射線の吸収線量として表す単位であるmGy(ミリグレイ)やGy(グレイ)を使うほうが良いとされています。胎児への影響が出るとされる100mGyを超える放射線量を浴びる可能性があるものとして、原発事故やがんなどの放射線治療があります。
妊娠初期の被ばく影響①:奇形、流産
妊娠初期に一定量以上被ばくすると、胎児に奇形が出る可能性があるといわれています。妊娠初期は胎児の細胞分裂や分化が盛んで、放射線による影響を受けやすい時期です。そのため、妊娠期間のうちどの時期に被ばくしたかによって影響の出る部分が違ってきます。
一方妊娠3週末までの妊娠超初期はまだ器官形成期に入っていませんので、この時期に被ばくをしても奇形を起こすことはありません。妊娠超初期に一定量以上の被ばくをした場合、妊娠に至らないか、もしくは妊娠しても流産になります。
妊娠初期の被ばく影響②:発がん、発育遅延
妊娠9週以降の胎児期に一定量以上被ばくすると、発がんや遺伝的影響、発育遅延、精神遅滞などの影響が出る可能性があります。胎児期に被ばくすることで、無事に生まれても発がんリスクが高まったり、発育の遅れが出ることがあります。また、放射線によって胎児の生殖器に影響が出る可能性もあり、生まれた赤ちゃんが成長して不妊になるなどの影響も考えられます。
影響が出る放射線量は?妊娠時期別に解説!
妊娠初期の放射線による胎児への影響は、どの時期にどれくらいの放射線を、どの部位に受けたかによって違ってきます。ICRP(国際放射線防護委員会)によると、妊婦さんが被爆をして影響が出る「しきい値」は100mGy~200mGyとされています。「しきい値」とは、影響が出る放射線量の最低の値のことです。一般的に、妊娠4週~10週でのしきい値は100mGy、妊娠10週~27週で120mGyといわれています。
mSv(ミリシーベルト)でいうと?
日常的に被ばく量を表す単位はmSvですので、この単位でいうとどれくらいの被ばく量で胎児に影響がでてくるのでしょうか。まず、受精後0~9日の時期に50~100mSv以上被ばくすると、受精卵が死んでしまい妊娠が成立しない、または流産する可能性が出てきます。妊娠4週~12週では100mSv以上で奇形が発生したり流産する可能性があります。
さらに、妊娠12週~27週で120mSv以上被ばくすると発育遅延や精神遅滞などの影響の可能性が出てくるとされています。なお、国際放射線防護委員会は、妊娠から出産までに妊婦が受ける被ばく量が10mSvを超えないようにすべきだとしています。