今回は和訳レッスンを一休みし、「マーケティング」に関する婉曲表現をご紹介します。ぜひ肩の力を抜いてお読みください。

「夏みかん」という名前で売り出していた夏みかんを「サマーオレンジ」という名前に代えて売り出したら売り上げが2倍になったという話を小学生のとき先生から聞いて驚いたことがあります。しかし物を売ろうとすれば、それくらいの“工夫”は必要ということですよね。ちなみにジーニアス和英辞典によれば、「夏みかん」に相当する英語はChinese citronですが、「チャイニーズ・シトロン」という名前で出していたらそこまで売り上げが伸ばせたかどうかは分かりませんよね。

物を売るための“工夫”は喫茶店でも見られます。ドリンクの「ビッグ」サイズはあるのに「スモール」サイズがないファーストフード店をよく見かけますが、「スモール」より「レギュラー」のほうが“お得感”があるので「レギュラー」と言い換えているのでしょう。

物を売るときにこうした“工夫”をするのは日本だけではありません。そこで英語ではどのような“工夫”をしているのか見ていきましょう。

安いこと自体は買い手にとっては良いことではありますが、あまりダイレクトに安さをアピールすると買い手にとっては、自分が貧乏であることをばらされてしまうというリスクを負うことになりますので、売り手はその点も考慮しなければなりません。そういう理由でダイレクトすぎるcheapという言葉はタブーといえます。同じ「安さ」をアピールするのなら、budget, economy, low-cost, inexpensiveのいずれかに言い換えたほうが無難です。

サイズを形容する場合は、日本同様、smallをregularとかstandardと言い換える場合がありますが、そのように言い換えた場合、普通のサイズのものがlargeに“格上げ”されることになります。ちなみに自動車の場合はsmallがcompactに言い換えられます。

さて、では他の「マーケティング」に関する婉曲表現も見ていきましょう。

○ economy class, tourist class
主に飛行機の席で使われますが、「割安の」という意味で使われます。

○ complimentary
「賞賛を表わす」「お世辞の」「お愛想の」という意味のあるcomplimentaryですが、「無料の」「招待の」という意味で婉曲的に使われることがあります。例えば、complimentary beverageは「無料の飲み物」、complimentary dinnerは「招待の会食」、complimentary ticketは「優待券」のことです。

○ courtesy
「礼儀正しい」という意味のあるcourtesyですが、「無料の」「サービスの」「(ホテルなどの)送迎用の」という意味で婉曲的に使われることもあります。例えば、courtesy copy of the textsといえば「教師用献本」、courtesy phoneといえば「無料の案内用電話」という意味になります。

「安い」ものだけでなく「古い」ものを売るときにも注意が必要ですね。second-handといえばネガティブなニュアンスがあるため顧客を引きつけることは難しいですが、その点ではusedも同じことがいます。こうした言葉の代わりにnearly newとかpre-owned、previously ownedと婉曲的に言うことがあります。

不動産屋さんは売買を成立させたいがため、さまざまな工夫をするようです。例を見てみましょう。