コロナ禍で自宅自粛の機会が増えたのと同時に、全国的に児童虐待疑いの件数が急増しています。

昨年、厚生労働省から発表された全国の児童虐待の対応件数は20万5000件以上。前年度より1万1200件近く増加し、過去最多を記録しました。

暴力
画像はイメージです
◆子どもの前で家族に暴力をふるう心理的虐待「面前DV」が増加

児童虐待には身体的虐待や性的虐待、ネグレクト、心理的虐待など大きくわけて4種類ありますが、時には周囲の大人たちが「虐待」と認識せずに、子どもに心の傷を与えているケースもあります。

特に近年は子どもの前で家族に暴力をふるう心理的虐待「面前DV」が増加傾向にあり、緊急の対策が求められています。

虐待を受けた子どもたちに必要なのは、専門家による心のケア。教育や福祉の現場では、どのような対策が講じられているのでしょうか。140万部超の大ベストセラーシリーズ『ケーキの切れない非行少年たち』の著者である精神科医・宮口幸治先生の最新作『傷ついた子を救うために マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち4』より、その実態を抜粋してお届けします。

マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち4
マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち4
マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち4
マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち4
マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち4
マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち4
◆一定の支援が必要な「境界知能」、診断までつかない「グレーゾーン」とは?

宮口幸治『境界知能とグレーゾーンの子どもたち』
宮口幸治『境界知能とグレーゾーンの子どもたち』
「なぜかいつも落ち着きがない」

「ひとつのことが長続きしない」

「ほかの子どもたちとコミュニケーションが上手に取れない」

こうした特徴を持つ子どもたちの対応に頭を抱える親や教育関係者は決して少なくありません。しかし、「実はこうした子どもたちは、知的障害には該当しないけれども平均的な子どもの7~8割の発達年齢ゆえ一定の支援が必要とされる『境界知能』や、何らかの課題があるものの発達障害の診断まではつかない『グレーゾーン』に該当される可能性もある」と語るのが、精神科医の宮口幸治先生です。

そんな境界知能やグレーゾーンの子どもたちの特徴やその対応策を、漫画でわかりやすく紹介したのが、宮口先生による『マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち』シリーズです。

◆第4巻の舞台は、児童養護施設で育つ子どもたち

マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち4
本シリーズでは、小学校の新米教師が同僚の教師や弁護士、児童精神科医、法務教官などと協力しながら、教育現場で出会う境界知能やグレーゾーンの子どもたちの問題に取り組む様子を通じて、彼らが抱える生きづらさやその対処法などを紹介。

長年にわたって医療現場などで境界知能やグレーゾーンの子どもたちとの対話を模索してきた宮口先生ならではの知見が、シリーズの随所にちりばめられています。

第1巻と第2巻は小学校などの教育現場を、第3巻では少年鑑別所や少年院など司法の現場を取り上げるなど、様々なシチュエーションで、境界知能やグレーゾーンの子どもたちを描いてきた本シリーズですが、第4弾となる最新作『傷ついた子を救うために マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち4』は、その舞台を児童養護施設に移して展開されます。

◆虐待やネグレクトを受けた子どもたちを待ち受ける悲しいできごと

厚生労働省の報告によれば、令和2年3月末の時点で児童養護施設は全国に612ケ所設置されており、2万4538人の子どもたちが生活しています。

そのうちの約35%、つまり約8500名の子どもは小学生。また、平均在籍期間は5.2年ですが、一方で10年以上施設に在籍する子どもたちが全体の14.6%も存在するのだとか。

第4巻では、両親の離婚後に母親やその交際相手から身体的虐待を受けたことから児童養護施設で暮らす小学生・オオモリ君や、児童養護施設で育った後に非行化し、2度に渡って少年院に入ることになったキノシタ君らを軸に物語が展開。彼らの姿を通じて、児童養護施設で育つ子どもたちの環境や、境界知能の子どもが虐待を受けて育った際に待ち受ける悲しいできごとを紹介していきます。

マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち4
宮口幸治『傷ついた子を救うために マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち4』
境界知能やグレーゾーンの疑いがある子どもたちが虐待を受けた場合、どのようなリスクが待ち受けているのでしょうか? そのひとつが「非行化」です。

境界知能やグレーゾーンの子どもたちは、「勉強についていけない」「周囲に自分の感情を伝えるのが苦手」「手先が不器用」などの特徴を持つことがあり、同世代の子どもたちより勉強や運動で遅れをとったり、コミュニケーションで問題を起こして孤立してしまうこともあります。

しかし、一見すると単に手のかかる子に見えるため、教育現場や家庭ではその兆候が見過ごされ、周囲からの理解が得られないケースも多いのだとか。

さらに親からの虐待などによって十分なケアが行き届かないと、次第に「どこにも自分の居場所なんてない」「自分は頑張ってもどうにもならない」と孤独感を募らせ、問題行動や非行につながってしまうという事態に陥ってしまうことも……。

日本人の7人に1人はいるという境界知能やグレーゾーンの子どもたちの実態や、彼らを支援するヒントについて、ぜひ本シリーズを通じて触れてみてはいかがでしょうか。

【宮口幸治】

立命館大学教授、一社)日本COG-TR学会代表理事。京都大学工学部を卒業後、建設コンサルタント会社に勤務。その後、神戸大学医学部を卒業し、児童精神科医として精神科病院や医療少年院、女子少年院などに勤務。医学博士、臨床心理士。2016年より現職。著書『傷ついた子を救うために マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち4』

<文/女子SPA!編集部>

【女子SPA!編集部】

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