悪徳業者に出くわした現場

「孤独死現場の清掃中に見知らぬ男が…」遺品整理人が明かす悪徳業者の存在<漫画>
(画像=仕事中の小島美羽さん、『女子SPA!』より引用)

――遺品整理人として働き8年が経過したとのことですが、今までに何件ほどの現場を経験してきたのでしょうか?

小島美羽さん(以下、小島):約3000件です。

――そのなかでも特に印象的な現場はありましたか?

小島:当時の私と同じ年齢の22歳男性が孤独死した現場で、部屋には残された犬がそのまま死んでいて、ゴミが散らかっているような状態でした。そうしたら清掃中に、大家なのか管理会社の人なのかわかりませんが、見知らぬ男性が入ってきて、社長を呼んでくれと15分ほど居座られて。そのときちょうど社長がいなかったので、そのことを伝えるとやっと帰りました。

 もう来ないだろうと思ったら、後日ご遺族のお父さんがいるときにまた同じ人がやって来て、お父さんが泣いているにもかかわらず、ずっとリフォーム代を払えと言っていたんです。もともとこういった業者にだまされ法外な金額を払ってしまったご遺族の話を耳にしたことがあり、そういった問題をなくしたいという思いも、この業界に入る理由の一つとしてありました。なのに、当時入社して3ヶ月目の新人で、法律の知識もなければ、その場でどうすることもできなくて……。

 結局、ご遺族のお父さんが早く終わらせたいとの思いで、払わなくてもいいはずのリフォーム代をすべて払ってしまいました。何も助言できず悔しさが残り、初めて現場で泣いてしまいました。後日、お父さんから「助かりました」との電話をいただいたのですが、何もできなかったので悔しい気持ちが残りました。

――人の死を利用してお金を巻き上げる……。それも珍しくないということに驚きました。

小島:最近でもよくあります。3年前に特殊清掃した現場で、大家がリフォーム会社と結託してご遺族に200万円ものリフォーム代を払わせようとしていました。私たちも部屋の状態は何度も確認し、写真にも納めていたので問題ありませんでしたが、ブレーカーの蓋がないなど、言いがかりをつけてきて。

 結局裁判になり、社長が証人として出廷しました。裁判には勝訴しましたが、人間の黒い部分を目の当たりにするのはつらいことです。

この仕事で、前よりも世の中を知ることができた

「孤独死現場の清掃中に見知らぬ男が…」遺品整理人が明かす悪徳業者の存在<漫画>
(画像=ミニチュア作品の制作風景、『女子SPA!』より引用)

――遺品整理人として働くなかで、考え方や人との向き合い方は変わりましたか?

小島:昔よりは人間的に成長したかなと思います。入社した当初は右も左もわからない状態で、よく「あなたは物事をまっすぐ見過ぎだから、斜めからの視点をもつように」と言われていたのですが、先ほど言ったような、人をだますような人と会ったことがなかったので、その言葉の意味がわからなかったんです。

 でも、実際に現場を重ねていくと、人間の黒い部分がどうしても見えてくるんですよね。法外なお金を請求する悪徳業者や、故人の遺品を勝手に持ち出そうとしてしまう近所の人、故人がお金を残さなかったと知ってから態度が急変してしまうご遺族など、生きている間はいい顔をしていても、その人が亡くなった瞬間に手のひら返しされてしまうんです。

 この仕事に携わっていなかったら、このまま大人になりいろんな人に騙されるのかもしれないと考えたことはあります。考え方が変わったというよりは、世の中を知ることで、トータル的に人間として成長できたと思います。

――どのようにして悪徳業者か判断するのでしょうか?

小島:話せば多少どういう人かなんとなくわかるようになりました。言動がおかしかったり、話が噛み合わなかったり、業者の人しかわからないような専門用語を使っていたりすると、怪しいと感じることはあります。最初から疑っているわけではないのですが、違和感を抱いたら注意して接するようにはしています。