過酷な遺品整理人の現場
――『あなたの生きた証を探して 遺品整理人がミニチュアで表現する孤独死の現場』を出版したきっかけはありますか?
小島美羽さん(以下、小島):竹書房の方から依頼をいただきました。担当者の方が以前私が出演した番組を見て、女性の遺品整理人をあまり目にすることはないと興味をもってくれたんです。そこで実際にお会いし、普段私がミニチュアを通して伝えていることや、孤独死の現状などを話し、最終的に漫画の出版が決まりました。
――漫画では、遺品整理人は100人中99人が辞めてしまうほど、離職率の高い職業であると書かれていました。実際に働くなかで、周りが辞めていく光景を見てきましたか?
小島:私が入社したときにいた先輩もたくさん辞めていますね。入れ替わりが激しく、会社のなかでは自動的に私が先輩のような立ち位置になることが多いです。
――どのような理由で離職される方が多いのでしょうか?
小島:人によって理由はさまざまなです。私個人が見てきた中では、男女で傾向があるのかなと思います。女性は体力面で、男性は精神面で耐えられなくなってしまう人が多い印象です。
取材に来たスタッフの方と一緒に孤独死の現場に入ることがあるのですが、こういう現場が苦手な方はお昼休憩でさっぱりしたお弁当を選んだりするのですが、意外にも女性カメラマンさんやプロデューサーさんは平気な方が多く、お昼に平然とお肉弁当を食べたりしていました。
父親の死がきっかけで遺品整理人に
――精神・体力面でも忍耐力が必要な仕事だと感じたのですが、小島さんが遺品整理人を選んだ理由は何でしょうか?
小島:きっかけは父親の死です。私が高校2年生のとき、一人暮らしをしていた父親が脳卒中で倒れていたのを偶然母親が発見しました。孤独死の手前で病院に搬送され、その後亡くなりました。酒飲みで暴力を振るう父が嫌いでしたが、亡くなってから、本当は父のことを尊敬していたいたのだと気付き、失って初めて大切な存在だったのだと気付かされました。「もっと関わっていればこんな結末にはならなかったのかな…」と後悔の気持ちでいっぱいになったんです。
父の死をきっかけに、遺品整理や特殊清掃の仕事に携わりたいと思うようになり、当時働いていた郵便局の仕事を辞め、22歳で遺品整理クリーンサービスに入社しました。遺品整理人として働いて、今年で8年目です。
――小島さんのように何かしらのきっかけや想いから、遺品整理人になる人は多いですか?
小島:そうですね。家族や親戚など、身近な人が亡くなったことをきっかけに、テレビやメディアで遺品整理人という存在を知って入社する人は多い印象です。やはり体力を使う仕事なので離職率は高いですが、何かしらのきっかけや、その人なりの想いがあるからこそ、過酷な現場でも働こうと思えるのだと思います。