産休とは?
産休とは、「産前産後休暇」のこと。労働基準法(第65条)上で次のように定められています。
①使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
②使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。
③使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。
出典:労働基準法
つまり、産前6週間(42日間)は妊婦が希望する場合に権利として取得できる休暇なのに対し、産後8週間(56日間)は母体保護のため取得が義務づけられている休暇です。
ただし、ママ自身が希望し、かつ医師が問題ないと認めた場合に限り、産後6週間以降(43日目~)は復帰することも可能です。
このことから保育園も、最短で生後57日以降から入園可能となっている園が大半を占めます。
産休中に給与支給がある企業は少数
雇用者側が従業員の産休取得を拒むこと、休暇の取得を理由に不利益な扱いをすることは法律で禁じられています。
一方で、産休中の従業員に対し雇用者側が給与を支払う義務はとくにありません。
そのため産休中に給与を支給してくれる企業は、ごくわずか。(企業によっては、給与の一部を支給してくれる場合もあり)
産休中の給与や手当の扱いについては、それぞれの就業規則で定められているはずなので、確認しておくとよいでしょう。
産休中の収入減少を保障する「出産手当金」
とはいえ、およそ3カ月以上にもおよぶ産休期間中、それまであった収入がゼロになってしまうのは厳しいですよね。
産休中に働くことができない分の収入を保障するのが、健康保険から支給される「出産手当金」です。
受給資格・支給額は次の通り。
- 受給資格:自身が健康保険(国民健康保険以外)の被保険者(=本人が保険料を払い、加入している)であり、産休を取得した者。
かつ、産休中に給与の支払いがないこと(給与発生しても給与<出産手当金の場合は、その差額を手当金として受給することが可能)
- 支給額(日額):支給開始日以前に継続した12カ月の各月の標準報酬月額を平均した額÷30日の3分の2。給与の支払いがある場合は、その差額
たとえば、各月の標準報酬月額の平均が30万円の女性で、産前6週の8月20日から産前休暇を取得。
9月30日に出産(予定日どおりに出産)し、産後8週の産後休暇を取得(11月25日まで)のケースで考えてみましょう。
この場合、
- 支給額(日額)=300,000円÷30日×2/3=6,667円
- 支給対象期間:2021年8月20日~11月25日(42日+56日=98日間)
- 総支給額=6,667円×98日間=653,366円
となります。
月額給与の満額までとは行かないものの、手当が支給されるのは非常に心強いですよね。
ただし、出産手当金は産後にまとめて申請するのが一般的なため、手元にお金が入ってくるのは出産後しばらく経ってからという点に注意が必要です。
上記ケースであれば、11月26日以降に申請し、手当金が振り込まれるのは翌年の1~2月頃となります。
そのため、産休中の生活費などとして、ある程度まとまったお金を確保しておくことは必要です。
出産手当金は、産休を取得する女性自身が雇用形態に関わらず被保険者であること、国民健康保険以外の健康保険に加入していることがポイントです。
パートナーが加入する健康保険の被扶養者(扶養に入っている人)、フリーランス・自営業で国民健康保険の被保険者の場合は、出産手当金の受給対象とはならないので注意しましょう。
健康保険に加入する全ての人がもらえる「出産育児一時金」
出産でもらえるお金のもう一つが、「出産育児一時金」です。
児童1人につき42万円が、健康保険から支給されます。
こちらは、出産手当金とは異なり、健康保険の種類や被保険者/被扶養者に関わらずもらうことができるお金です。
受給の条件などは以下となります。
- 受給資格と要件:被保険者または家族(被扶養者)が、妊娠4カ月以上で出産をしたこと。(早産や死産・流産・人工妊娠中絶(経済的理由によるものも含む)も支給の対象)
- 受給方法:直接支払制度・受取代理制度・事後払い方式のいずれかを選択可能
産前に出産予定の医療機関と合意を交わして「直接支払制度」を利用すれば、健康保険組合が医療機関へ42万円を直接支払ってくれます。
そのためママは出産して医療機関を退院する際に、多額の分娩・入院費用を支払う必要がなく、42万円を超えた差額分だけの支払いで済むのです。
一時的といっても、40~50万円ものまとまった現金を準備するのはなかなか大変ですから、出産するママにとって心強い制度ですね。
もし、分娩・入院費用が42万円未満だった場合は、後日その差額分を健康保険組合からもらうことができます。