騒がしい場所にいると体調が悪くなる。食べられないものが提供される給食の時間が苦痛で、学校に行きたくなくなった。服のタグや縫い目がとにかく痛い──。

「服やマスクがとにかく痛い…」感覚過敏の高校生が“困りごと”を仕事にできたワケ
(画像=加藤路瑛さん(16歳)、『女子SPA!』より引用)

 外の刺激に敏感なことで日常に支障をきたす「感覚過敏」。その症状と対峙する加藤路瑛さん(16歳)のストレスを軽減させたのは、食事メニューの見直しを図るなどの対応を行った家族、デジタル耳栓を提案した保健室の先生、給食の持参を許可した担任の先生といった、固定観念にとらわれず新しい道を提示してくれた人々の存在だったといいます。

 そしていま加藤さんは、事業やコミュニティの取り組みを通じて、自ら“固定観念を壊す存在”となっています。

 現在高校2年生の加藤さんは、自身が取締役社長、母の咲都美さんが代表取締役を務める“親子起業”の手法で、2018年に12歳で株式会社クリスタルロードを設立。

 また感覚過敏の課題解決を目的とした「感覚過敏研究所」や、触覚過敏の人でも心地よく身につけられるアパレルブランドなども立ち上げています。2022年7月29日には、『感覚過敏の僕が感じる世界』を上梓しました。

 そのバイタリティや創造力はどこからくるものなのか、お話を聞きました。

12歳で母と“親子起業”

──“親子起業”という形で会社設立に至るまで、どのようなプロセスを辿ったのでしょうか。

加藤路瑛さん(以下、加藤):もともとは今のように感覚過敏の課題解決に向けて何かをしたいというよりは、単純に「会社を作ってみたい」という気持ちから起業をしました。

──「会社を作ってみたい」という気持ちを抱いたきっかけは?

加藤:中学生のとき、理科の元素記号を表すカードを化学結合のように組み合わせてプレイする「ケミストリークエスト」というカードゲームを買ってもらいました。それを開発したのが小学生で起業した人だったということを知り、「自分と同じくらいの年齢ですごい商品を作っている人がいるんだ!」と驚いて。そのことに背中を押され、僕も起業してみようと思うようになりました。

 15歳にならないと印鑑登録ができず、代表になれないといった事情もあるのですが、そのカードゲームを作った方が親に代表となってもらう形で起業されていたことを知って、僕も同じ方法を取ろうと思ったんです。

些細なことでも「すごいね!」と褒めてくれた両親

「服やマスクがとにかく痛い…」感覚過敏の高校生が“困りごと”を仕事にできたワケ
(画像=『感覚過敏の僕が感じる世界』(日本実業出版社)、『女子SPA!』より引用)

──ご両親に起業の話をしたときは、どんな反応が返ってきたのですか?

加藤:最初に相談した時は「いいんじゃないの?」と軽く受け流されるくらいでした(笑)。そこで学校の先生に相談したところ「事業計画書を作ってみたら?」と言ってもらって。そのことを親に話したら本気だということが伝わって、一緒に事業計画書を考えてくれることになりました。

──すごい行動力ですよね。その積極性はどこから来るものだったのでしょうか。

加藤:昔から身体が小さく早生まれということもあり、周りの子と比べて出来ることが少なかったのですが、そのぶん些細なことでも出来ると「すごいね!」と褒めてくれるような親だったので、自己肯定感が人一倍育まれたということが大きかったのではないかと思います。

 だからこそ、いま僕が感覚過敏の課題を解決する取り組みを行う上で、周りからの声を自信やモチベーションに繋げていけている気がしますね。

 また、起業する上で「事業計画書を書いてみたら?」と提案することで細かいステップを示した先生がいてくれたり、計画書について一緒に調べてくれた親もいたりして、僕は本当に周りのおかげでいろいろなことができていると感じます。

 僕が大切にしているのは、何かやりたいと思った時にやらない理由を見つけるのではなく、まずは挑戦してみること。そして人を巻き込みながら協力し合うこと。そうすることでどんどん仲間も増えていくので、より大きな自信へと繋がっていきます。