「私の年で子どもがいないのは私くらいだよ」

 その晩も、ベッドで背を向けている夫と、今度はパンケーキを食べに行こうと話しながら、いい雰囲気になったのだからと手を伸ばす妻。その手をそうっと、だが力強く自分の体から引き離す夫。

「私の年で子どもがいないのは私くらいだよ、みんな子どもがいて家庭があって」 「2人だって家庭だよ」  

その後、妻は「忙しいのはわかってる。こんなことばかり言われて嫌だよね、ごめんね」とまた謝る。  

夫は多忙で、おそらく高収入でもある。そんな夫にすぐに「ごめんね」と言う妻。夫もまた、妻には核心を話せない様子だ。ワケあり夫婦というわけでもなさそうなのに。

 地上波連続ドラマ初主演の“遅咲きの女優”である松本まりかは、明るそうで、でもどこかどんよりしている35歳の人妻をリアルに演じている。声が細く、笑っても寂しげに見えるところが“純”という女なのだとわからせてくれる。微妙に揺れ動く心を、どこまで多彩に見せてくれるのかが楽しみだ。  

純の歓迎会のあと、真山とふたりで同僚たちのうしろから歩いていると、夫が見知らぬ女性と歩いてくるのを見てしまう。自分の知らない夫の笑顔を見て、彼女は凍りつくが、その場から去る。相手の女性は高校時代の同級生なのだが、夫はどうやら同窓会があることを妻には伝えていなかったようだ。  

夫婦のなれそめ、夫と妻がそれぞれ抱えている心の闇は、これから明らかになっていくのだろう。