嫌な思い出も許せるような気がしていた
夫からも「君の地元を見てみたいな」と言われた佐田さんは、
「何年も帰っていないけれど、今は一人じゃなくて頼れる夫もかわいい赤ちゃんもいるし、もう一度だけ顔を合わせてみようかと思いました」と帰省を決意します。
姉に帰省するつもりであることを伝えると、「結婚相手も見たことないし、赤ちゃんにも会いたい」と“一応は”歓迎するような雰囲気だったそうです。
「父や母とは話さなかったのですが、姉が『言っておくから』と返してくれて、実家に帰る日は駅まで父が迎えに来ることが決まりました」
実家から離れて10年以上、出産が終わって夫と赤ちゃんと幸せな毎日を過ごす佐田さん。「その時は、実家での嫌な思い出も、許せるような気がしていたのですよね……」と小さな声でつぶやきました。
ここどこ? 連れて行かれた「見たこともない家」
帰省の当日、久しぶりに地元の駅に降り立った佐田さんは、昔と違い大きなショッピングセンターやフランチャイズの飲食店が並ぶ駅前を見て感動していたそうです。
「家族とは笑顔で会える」、夫にもそう話していた佐田さんの前に現れた父親は、予想に反しての仏頂面でした。
佐田さんにも、佐田さんの夫にも「こんにちは」とだけ短く挨拶し、さっさとクルマに向かう父親の後ろ姿を見て、上がっていたテンションが一気に下がります。
そして、父親の車に乗り込んで連れて行かれた先は、見たこともない家でした。
「え、ここどこ?」
当たり前のように駐車場に車を停める父親に声をかけると、
「前の家はもう取り壊した。今はここに住んでいる」
と父親は佐田さん一家の顔も見ずに答え、さっさと玄関を開けて中に入るのでした。
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