自分を綺麗に見せることには興味がない
──映画で初主演した経験が俳優を目指すきっかけに?
渡辺:役者を目指すというより、もともとバンドで誰かと一緒にものづくりをすることが僕の人生を変えた最初の革命だったんですが、映画で第二の革命が起こってしまったんです。音楽も文章も自発的にやっていたことで、一方、演技だと他人から何かをやってほしいと求められて、映画に自分を捧げることになる。それがバンドと近いようで真逆の感覚で、自分はその両極があって初めてバランスが取れるんだと思ったんです。
──渡辺さんは能天気で無神経な若者を演じることが多いですが、いつも本当にウザいと感じさせられて素晴らしいです。
渡辺:それは嬉しいですね。そもそもキャラクターや自分を綺麗に見せることに興味がなくて、画面の中で本当に血が流れて脈打っているように見せたいんです。音楽でも歌がうまくなりたかったわけじゃなくて、体の中から湧き起こるにおいみたいなものを表現できないかと考えていました。演技だと、機械的な動作の精度を上げることが生々しさに繫がったりする。それに気づいたとき、音楽でやりたかったことと近い表現ができそうだと思ったんです。画面には映らないけど、「なんかこいつ生きてんな」って思ってもらえるような鼓動を伝えたいんです。
『ロマンス暴風域』はターニングポイントになりそう
──そういう意味では、鬱屈と孤独をこじらせた『ロマンス暴風域』の主人公はうってつけの役じゃないですか?
渡辺:はい。すでに自分の活動のターニングポイントになりそうな実感があります。役者としてやってきた十数年分をめちゃくちゃ込めていて、演技としても絶対に今までで一番いいと思う。自分を使い果たしそうなくらい、すごく細かいところまで意識しながら演技に集中させてもらっている感じですね。
主人公が風俗で運命の出会いを果たす『ロマンス暴風域』第1話
──作品選びはご自身で決めているんですか?
渡辺:そうですね。『ロマンス暴風域』はまず原作を読んで、ぜひやりたいと思いました。自分が孤独なことにすら気づいていない孤独というか、求めたいけど求めたいものがわからない不安というか、ある種の空洞感を感じたんです。それでいて情熱もあるこのキャラクターに、僕だからこそできるアプローチがあるんじゃないかと思えたんです。「どうしても自分がやらなくちゃ」と思える役と出合えるのって、すごく幸運ですよね。
──その原動力はキャラクターに対する共感なのか興味なのか、どっちなんでしょう?
渡辺:興味でしょうね。絶対に自分と同じ役なんてないはずで、共通点を探すことはないです。例えば自分ならこういう言い方はしないって思ったときに、どんな人生だったらこういう言い回しになるんだろうとか、自分との違いを考えるのが好きです。だからサトミンと容姿は似ているかもしれないけど、内面的にはかなり遠いと思ってます。