・・・真菌性外耳炎・・・
真菌というとピンと来ないかも知れませんが、いわゆるカビのことで、人間では水虫が有名でしょうか。チーズやおみそ、日本酒など、日常の食生活に有用なカビもいますが、病気の原因となってしまうカビは治療に時間がかかり、愛猫泣かせ、飼い主泣かせの困り者です。
【原因】
皮膚糸状菌(ひふしじょうきん)やマラセチア(酵母様真菌)が感染することによります。皮膚糸状菌は主に耳介背面などに、マラセチアは外耳道内に感染がみられます。通常、これらの真菌は少量ですが、空気中を漂っていたり、皮膚の表面にくっついていたりとありふれたものです。しかし、猫の体力が何らかの原因(病気やストレスなど)で落ちてしまっていたり、子猫や老猫のように抵抗力が少なかったり、傷があったりする場合には、体の中に侵入してきて病気を引き起こしてしまうことがあります。
【症状】
皮膚糸状菌では耳介の周囲や辺縁に痂皮(カサブタ)や脱毛が認められます。マラセチアでは黒褐色で少し粘稠性のある耳垢が認められます。この時の耳垢は特有の匂い(発酵臭)があります。痒みは猫それぞれで、激しく痒がる猫もいれば、あまり痒がらない猫もいます。
診断は顕微鏡で耳垢や痂皮を検査し真菌を確認することで行います。また、時にはウッド灯という特殊な紫外線が出る装置で皮膚を照らしたり、真菌培養を行ったりすることで真菌がいるかどうかを確認していきます。
【治療】
耳介周囲や辺縁での真菌感染では周囲の被毛を広範に刈り、抗真菌剤を塗布していきます。外耳道内に感染がある場合には外耳道内を充分に洗浄し、耳垢を取り除き、抗真菌剤を塗布していきます。症状によっては抗真菌剤を飲ませることがあります。
真菌は乾燥に弱いので、耳の中や周囲に被毛が生えている場合には、風通しを良くするために、これを切ったり、抜いたりすることもあります。
真菌の治療は根気が必要です。一度治ったように見えても、奥に潜んでいる事があるので、主治医の指示通りに治療を行っていくことが大切です。また、できるだけストレスを避け、抵抗力を下げる原因となる病気を持っている場合はその治療も平行して行ってあげましょう。
・・・細菌性外耳炎・・・
細菌も常日頃から私達の周囲に存在していますが、体の抵抗力がそれらの感染を防いでくれています。しかし、傷があったり、抵抗力が弱っていたりすると細菌が体の表面や中に侵入して増殖し、病気の原因となってしまいます。
【原因】
細菌は多くの種類がありますが、外耳炎の原因となるのは主に黄色ブドウ球菌で、稀に緑膿菌や大腸菌といった細菌などによることもあります。
真菌と同じように、体の抵抗力が落ちている場合や傷がある場合、また耳の中の湿り気が多い状態などが細菌感染を引き起こしやすい要因となります。家庭で耳の掃除をするときに、綿棒でついつい擦りすぎてしまい、微細な傷をつくり、そこから細菌が感染してしまう事がよくみられます。お耳の掃除をするときには、優しくそっと行ってあげましょう。特に綿棒は見える部分の耳垢だけを取り除くようにして、奥には入れないようにしましょう。また、シャンプーの際には耳の中に水やシャンプー液が入らないように注意しましょう。
【症状】
感染した細菌の種類によって、様々な色の粘稠性のドロッとした耳垢が認められます。黄色や黄白色、緑色、褐色など多様ですが、多くは腐敗臭などの悪臭が伴っています。痒みや痛みがあり、耳や頭全体を振ったり、壁などに擦りつけたり、後ろ足で引っ掻いたりといった様子がみられます。症状が重いときには、発熱や食欲の低下なども認められます。
診断は症状から推測し、また耳垢を特殊な染色液で染め、細胞や細菌の有無を調べたりすることで行われます。時に薬剤感受性試験といって、どの薬剤がその細菌に対して効果があるかを調べたりする検査を行っていくこともあります。
【治療】
外耳道内の洗浄を行い、抗生物質を外耳道内に塗布したり、症状によっては抗生物質を飲ませたりすることがあります。炎症が酷い時には抗炎症薬の投与を行うこともあります。
抗生物質が細菌に対し効果が高ければ、数日で症状は軽くなっていきます。投薬にもかかわらず悪化するような場合には、細菌が複数感染していたり、抗生物質が合わなかったりということが考えられるので、薬剤感受性試験を実施し抗生物質の種類を変える必要がでてくることもあります。
投薬は主治医の指示に従い、また不安や疑問があれば積極的に主治医に質問をしていくようにしましょう。
【早期発見のために】
感染性外耳炎は様々な原因で起こりますが、どの原因で起こっても症状は良く似ています。このため、耳や頭を振ったり、壁に擦りつけたり、後ろ足で耳を引っ掻いたりしていないか、また耳の中をのぞいて、耳垢が溜まっていないか、いつもと違う匂いはしないか、などといったことを日々愛猫とのスキンシップの中でチェックしていくと良いでしょう。異常があると感じた時には、できるだけ早く動物病院で診察を受けましょう。
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