男尊女卑を身を以て体験する女帝の改革第一弾は?男のオモチャか世継ぎを産む役目しか与えられていない文盲の貴婦人や女官たちの地位を高めようと、女子校を開設します。しかし、少女は王侯貴族に嫁がせて財力/権力を手に入れる政略結婚に使う’道具’としてしか価値のない存在で、下手に教育などしようものなら、「もらい手が無くなる!」「エカチェリーナのような’あたまでっかち’になっては困る!」と恐れて、母親達が登校させません。シーズン1で女官マリアル(フィービー・フォックス)は、エカチェリーナを裏切ったにも関わらず、今シーズンは貴族に返り咲きますが、父が残した遺産を継ぐために、8歳の従兄弟と名目上の結婚をしなければ相続さえできないのも男尊女卑の好例です。
エカチェリーナの出産や統治、外交は旧体制との闘いですが、ピョートルが世継ぎパーヴェルを思う気持ちや子育てに夢中になる様子は、まるで21世紀の育メンです。ロマノフ朝時代に、王室の子育ては乳母や教育係が担当し、自ら積極的に参画していた筈がありません。自分達の毒親とは正反対の親になろうと誓い合う皇帝と王妃、ベビーシャワー、国王が世継ぎを抱っこして宮廷を歩き回る事なども、あの時代には想像できません。ピョートルのみが、3世紀先の育メンとして超現代風に描かれているコントラストが面白いのです。
ピョートルのマザコン振りは、シーズン1から母親のミイラを大切に保管して事あるごとに話しかけるシーンなどから明らかですが、今シーズンは軟禁生活を強いられ、独りになることが何より怖いピョートルが、幼い頃に母親から受けた冷たい仕打ちやお仕置きを思い出して、ミイラを粉々にしてしまうシーンがあります。更に、ピョートル大帝(ジェイソン・アイザックス)は指導者としては優れていましたが、父親としては失格だったことも悟ります。こうして、毒親に育てられた結果、自信過剰〜自己不信の両極端に走る劣等感に苛まれ、自分の非を認めない、人間関係の距離感がわからない独裁者となった自分を生まれて初めて省みるピョートルが描かれています。