まだ生まれてもいないのにパーヴェルと名付けたお世継ぎの誕生を待ち侘びるピョートルは、育児時間とエカチェリーナと朝食を共にすることを条件に、意外とあっさり退位したかのように見えます。しかし、城の一角に幽閉され暇を持て余し、バイオリン、哲学、占星術、カンフーなど、文化人であることをエカチェリーナに証明するかのように、慣れないお稽古事に精を出すピョートルを尻目に、親友グレゴール(グィリム・リー)以下忠臣達(数人ですが)は、世継ぎが生まれた時点で、ピョートルに帝位を奪還してもらおうと、あの手この手でエカチェリーナの政策に横槍を入れます。食べる事と権力を振りかざして独裁政治を続けることしか興味のないピョートルは、啓蒙専制君主の概念さえ知らず、エカチェリーナが掲げる理想国家論など絵に描いた餅でしかありません。ロシア国民は、現状維持に何の疑問も感じないどころか、変わる必要がどこにある!と居直る始末で、エカチェリーナへの風当たりは半端ではありません。
即位したとは言え、エカチェリーナは時限爆弾を抱えています。出産前にある程度の近代化・啓蒙化をしておかなければ、ピョートル派にいつ抹殺されるか知れません。しかし、クーデターを起こして4ヶ月後、理想と現実は大違い、身の程知らずの行為だったのか?と不安が募る一方、近代化を急ぐ余り、迷信や旧体制の煩わしい慣習に真っ向から立ち向かう羽目になります。
エカチェリーナは、参謀オルロ(サッシャ・ダーワン)と将軍ヴェレメントフ(ダグラス・ホッジ)の経験と知恵を借りて、数々の政治改革に着手しようと試みますが、1)たかが女に何ができる?2)所詮、ドイツ人に何がわかる?3)一国を統治した経験がない小娘に振り回されて溜まるか!4)何もかも話し合いで丸く収めるだけでは、敵国から甘く見れらる5)(貧乏とは言え)貴族のお嬢様の思い付きは高慢と偏見に満ち満ちている等、見くびられる理由は山積みです。宮廷にたむろする貴族にとって、女帝は透明人間。頭を下げるどころか、道を譲ることさえしません。女故に、誰の目にも入らない!これぞ正しく、男尊女卑の極みです。