ルッキズムに関する漫画を書きたいと前から思っていた

――ルッキズムがテーマの作品を描くきっかけは何だったのでしょうか?

とあるアラ子(以下、とある):結構前からルッキズムに関する漫画を書きたいと思っていました。 近年、ルッキズム関連の炎上が何度かあった時に「ブスなんていない!」って言う人が結構いるんだなと思って。そんな簡単な問題なのかなって思う部分があって。それをテーマにしたら面白いんじゃないかと。 そこから形にするのに結構時間がかかってしまってしまいました。

「ブスはここにいる」反ルッキズム漫画を描いた理由を作者にきいた<漫画>
(画像=『女子SPA!』より引用)

――炎上しやすいテーマということで、慎重に進められていたのでしょうか?

とある:いえ、炎上が怖いというよりは、単純に舞台設定などが思い浮かばなくて。美醜の話を書こうとしてもどんどん違う話になっていっちゃって。

――描けるという手ごたえを感じたのは、設定が決まった時ですか?それともキャラクターが決まった時ですか?

とある:「メディアの編集部に異分子が入り込んでかき回す」みたいなのは最初から考えていたんですが、主人公がどうやってそこに入って行くかがなかなか決まらなくて。最初は「美人が入っていって思ったことを全部言っちゃう」とか、あと「SFの要素を入れる」とかも考えたんですけど(笑)。 ウェブメディア「&Sofa」さんで連載が決まり、ルッキズムという言葉になじみがあって、自分と近い世代で、リテラシーがあって、フェミニズムにも興味がある読者層が見えた時に、「ブスが復讐の相手を殺しにいく」という設定が浮かんで、これで行こうって思いました。知子と梨花の関係は、後から決めました。

言葉の問題だけじゃないよねってことは書いていきたい

――とあるアラ子さんご自身、ルッキズムに関してモヤモヤしたり嫌な思いをされたことは?

とある:人並みにコンプレックスはあると思うんですけど、自分の場合誰かにブスって言われて傷ついたことがなくて。もしかしたら言われたことはあるのかもしれないけど、あんまり記憶にない(笑)。人に言われたことに傷ついたりしないんですよね。でも世の中には、言葉に傷ついてる人が多いんだなって。

ルッキズムの話題になると、「ブスって言葉は使わない方がいい」とか「ブスを定義し直そう」とか、言葉のことばかり取りざたされがちなんですけど、自分にはわからない感覚なので全然ピンとこなくて。それがすごく不思議だなと思ったことが、ルッキズムに関して考えるきっかけになりました。言葉の問題だけじゃないよねってことは書いていきたいと思ってます。

――単行本掲載のおまけ四コマで、ブスという言葉を使う/使わないで担当編集さんともめるシーンがありましたね。言葉選びに気をつかわれていたのかなと。

とある:いや、私はそんなに気をつかわなくていいじゃん!って思ってたんですけど、担当さんが突然「ブスって言葉をタイトルに入れたくない」って言い始めて。でも最終的には勝てました(笑)

担当編集S(以下、S):ブスという言葉は結構強いので、ブラフ的に使いたくないなっていうのがあって。でもいただいたタイトル「ブスなんて言わないで」を見て、すごくいいタイトルだなって。自分が言葉狩り的な感じで言っちゃってたなと反省しました。

とある:そうですよ、言葉狩り!(笑)「ブスって言葉は使わないで、ルッキズムって言葉も使わないで、でもそういう話だってわかるタイトルにしましょう」って、そんなの無理だよ!っていう。(笑)